深刻化する人手不足を背景に、外国人採用を検討する企業が増えています。
しかし、昨今の急速な円安進行を受け、「賃金が目減りする日本で、外国人は働きたいと思うのだろうか」「円安でも外国人採用は成功するのか」といった不安の声も聞かれます。
実際、外国人労働者の数はどうなっているのでしょうか?
本記事では、2025年1月に発表された最新の外国人労働者数データ(2024年10月末時点)や厚生労働省への独自取材を交えながら、円安下の外国人労働者の現状と、企業が取るべき採用戦略について解説します。
【2025年発表】外国人労働者数は過去最多の約220万人に
厚生労働省が2025年1月31日に発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末現在)によると、日本で働く外国人労働者数は230万2,587人となり、前年比で25万3,912人増加(+12.4%)しました。
これは、届出が義務化された2007年以降、過去最多の数値です。
このデータが示す通り、円安が進行する中でも、日本で働く外国人労働者の数は増加し続けています。
円安がもたらす外国人労働者への影響とは?
2024年の外国人労働者数が過去最多を記録しましたが、円安が外国人労働者にとって無関係なわけではありません。
円安が進むことにより、以下のような外国人労働者のデメリットがあります。
実質賃金の目減り
日本円で給与を受け取っても、自国通貨に換金した際の手取り額が減少してしまいます。特に、母国への仕送りを目的とする労働者にとっては、大きなデメリットとなり得ます。
他国との賃金比較
近隣アジア諸国や、オーストラリア、カナダなど他の出稼ぎ先と比較した場合、日本の賃金水準の魅力が相対的に低下する可能性があります。
こうした状況から、「日本で働く魅力が薄れ、優秀な人材が他国へ流れてしまうのではないか」という懸念が、外国人採用を検討する企業の間で広がっています。
厚生労働省の見解は?【YOLO JAPAN独自取材】
円安が続く日本では、出稼ぎを目的とする外国人労働者にとって、賃金の魅力低下が懸念されています。この点について、厚生労働省はYOLO JAPANの取材に対し、次のような回答をしました。
「円安傾向が続く中、労働者数が減少していないことから、(現時点では)影響はそこまで出ていないのではないか」
この見解から、外国人労働者数が減少していない事実と照らし合わせると、現時点では、円安による労働者数の大幅な減少という事態には至っていません。
それでも外国人労働者が日本を選ぶ理由
外国人労働者は、円安にも関わらず日本で働こうとするのは、以下のような理由が挙げられます。
①深刻な人手不足と求人の増加
日本国内の多くの産業で人手不足が深刻化しており、外国人労働者に対する求人が増加しています。
特に、介護、建設、製造、農業などの分野では、特定技能ビザなどを活用した受け入れが活発です。
仕事が見つけやすい状況は、外国人労働者にとって大きな魅力となります。
②円安でも相対的に高い賃金水準
日本の賃金は、一部のアジア諸国の水準と比較すると、依然として高い場合があります。
円安を加味しても、母国で働くより収入が高いケースは少なくありません。
③キャリアアップ・スキル習得の機会
日本で特定のスキル(例:介護技術、高度な製造技術など)を習得したい、またはキャリアアップを図りたいという目的を持つ外国人労働者もいます。
賃金だけでなく、得られる経験やスキルも重視されています。
④環境
外国人労働者からすると、生活環境、 安全性、清潔さ、充実した社会インフラなど、日本の労働環境や生活環境に魅力を感じている外国人も多くいます。
賃金以外の要素も働く場所を選ぶ上で重要な判断材料となります。
⑤制度の整備と支援体制
特定技能制度の対象分野拡大や、受け入れ企業・登録支援機関によるサポート体制の整備が進んでいることも、外国人労働者が安心して働ける環境構築に寄与しています。
また、2027年度から育成就労制度が開始されることもあり、外国人が働く環境の向上も影響しています。
円安下の外国人採用で企業が取るべき戦略
外国人労働者数が過去最多を更新しているとはいえ、円安が続く中で、優秀な人材を確保し、定着してもらうためには、企業側の努力も不可欠となります。
魅力的な労働条件の提示
単純な賃金だけでなく、手当(住宅手当、通勤手当など)の充実、明確な評価制度、キャリアパスの提示など、総合的な労働条件の魅力を高めることが重要です。
円安リスクへの配慮
可能であれば、為替変動を考慮した手当の支給や、福利厚生の充実(例:社員寮の提供、食事補助など)によって、実質的な手取り額の減少を補う工夫も有効です。
働きがいと安心感の醸成
日本語教育のサポート、異文化理解研修の実施、メンター制度の導入、相談しやすい環境づくりなどを通じて、外国人従業員が安心して長く働ける職場環境を整えましょう。
賃金以外の魅力の訴求
日本での生活サポート(役所手続き支援、地域コミュニティ紹介など)や、日本文化に触れる機会の提供など、賃金以外の付加価値を提供することも、他社との差別化につながります。
採用チャネルの最適化
ヨロワークのような外国人材に特化した求人サービスを活用し、ターゲットとする国籍やスキルを持つ人材に効率的にアプローチすることも重要です。
まとめ
円安が進行する中でも、日本で働く外国人労働者数は過去最多となる約230万人となりました。
厚生労働省も「現時点で大きな影響は出ていない」との見解を示しています。
しかし、円安による賃金の魅力低下は事実であり、企業側は、賃金以外の労働条件や、働きがい、生活サポートといった多角的な魅力づくりに取り組む必要があります。
人手不足に悩む企業にとって、外国人採用は将来に向けて有効な選択肢となります。
円安という状況の中でも、適切な対策を講じることで、優秀な外国人材の獲得・定着につなげることが可能です。
今後の動向を注視しつつ、戦略的な採用活動を進めていきましょう。
