外国人人材を定着させるには?離職率を下げるポイントと成功事例を紹介!

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加地 志帆 /外国人実習雇用士

2019年にYOLO JAPANに入社し、外国人ユーザーの満足度向上を目指し、特にSNSを通じたプロモーション活動を担当。その経験を通じ現在は、企業が外国人採用をスムーズに進められるようヨロワークのウェブサイトにて情報発信。具体的には、外国人採用プロセスの支援、異文化理解を促進するコンテンツの提供。

2023年11月には外国人実習雇用士の資格を取得。企業と外国人が共存できる社会を目指すため外国人採用の知識を深めている。

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グローバル化が進む今日、多様な人材を求めて外国人を雇う企業も増えてきました。しかし、「企業風土が合わない…」「条件の相違」などで離職してしまうことが課題となっています。

本記事では、外国人が離職してしまう原因や、定着させるための対策を解説します。さらに外国人の労働者の受け入れに成功した具体的な事例を紹介します。

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外国人労働者は定着しづらい?外国人労働者の離職率

外国人を雇用する際に、気になるのが「定着率」ではないでしょうか。
高い費用を費やして採用したのに、離職されてしまうと採用コストが無駄になります。

そこで、まずは外国人労働者の現状と離職率について見ていきます。

右肩上がりに増加を続ける外国人労働者

日本の労働市場は、人手不足の問題に直面しており、その一つの解決策として外国人労働者の受け入れが拡大しています。

厚生労働省の『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』2023年10月末のデータによれば、国内に滞在する外国人労働者数は200万人を超え、新型コロナの影響があった時期を含めても、右肩上がりに毎年過去最高記録を更新し続けています。

(引用)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年 10 月末現在)

外国人労働者の離職率は「45.9%」

外国人労働者の人数、それを受け入れる事業所数が増加している反面、外国人労働者の離職率は高い傾向です。

厚生労働省が発表した「外国人雇用状況報告」では、外国人労働者の離職率が45.9%と10人採用すると約半分の5名が退職する高い離職率となっています。

参考:厚生労働省|外国人雇用状況報告結果(平成13年6月1日現在)

外国人労働者の離職率が高い理由

次に、外国人労働者の離職率が高い理由と転職について詳しく説明していきます。

①条件の認識相違

◆給与についての理解と同意が得られていなかった

当然ですが、労働者にとって、給与や労働条件は非常に重要です。特にアジア諸国から来日している外国人労働者は、母国の家族に仕送りをしている場合が多く「毎月いくら稼げるのか?」を重視している外国人が多い傾向です。

一部の職場では、外国人労働者に対して日本人労働者と比べて低い給与や不適切な労働条件を提供するケースがあり、このような不平等な待遇を受けると、離職を選択することにつながります。

また、社会保険料や税金への周知が外国人労働者に行き届いていないケースもあります。日本の慣習に不慣れな外国人は、いわゆる額面と手取りの違いを事前に伝えておかないと納得ができず「聞いていた給料と違う」となってしまい離職につながってしまうのです。

◆仕事内容のギャップ

日本で働くことを希望している外国人労働者は面接などで仕事内容を説明するだけだと、日本語能力の問題や自身の置かれた状況から、本当に理解をしていなくても「分かりました」と回答してしまうことがあります。

こうしたギャップを未然に防げるように、既に働いている社員や外国人労働者の仕事を事前に見学してもらうことで、採用後の仕事内容に対するギャップが解消されて離職を防ぐことができます。

また残業に対する考え方や、休憩・休日の取得などにも文化の違いはあります。日本人にとっては常識的な範囲の認識で残業や休日出勤を求めると、外国人労働者は「思っていた仕事内容と違う」と感じてしまいます。

②人間関係や企業文化に順応できない

日本の企業文化は外国人労働者にとっては馴染みにくい場合があります。
たとえば、遅刻などの時間厳守に対する考え方や、上司と部下との上下関係などが挙げられます。

このような企業文化の違いは日本で働く経験の少ない外国人にとっては理解しにくく、ストレスに感じることがあります。

さらに、他に自分と同じような外国人労働者がいないと疎外感を強く感じ、差別を受けているという感覚になってしまうこともあります。

③スキルアップやキャリアアップができない

日本人と比較して外国人労働者は、自身の能力やスキルを最大限に活用できる職場環境を求める傾向が高く、その職場環境で「これ以上スキルアップできない」「自身の潜在能力を活かせない」と感じると、日本人よりも決断が早く、容易に転職する傾向があります。

外国人採用に慣れていない会社だと、ずっと同じ作業を任せたり、メンターとなる外国人の先輩が不在でキャリアパスが見えなかったりすると離職につながってしまいます。

外国人労働者の定着に繋げる4つの施策

ここからは、外国人労働者定着のための効果的な対策方法を具体的にご紹介します。

①面接のクオリティを上げる

採用にあたって必ず行うのが面接です。企業側が志望動機や自己PRを候補者に質問するだけで終わってしまいがちな面接に、工夫をすることが重要です。

面接の時点で、外国人を採用する上で確認すべきことを抜け洩れなく質問し、また企業側からも伝えることで、離職につながる要因を激減させることができます。

例えば、外国人の候補者に聞いておくべき事として、宗教に関することが挙げられます。
お祈りの時間や、触れてはいけない食べ物、帰国しなければいけない事情などがあるからです。

また、企業側は給料の支払い方法や支払日、勤務条件なども面接の場で候補者へ正確に伝えます。

面接のクオリティを上げる方法として、外国人向け求人掲載サイトの「ヨロワーク」がお役立ち資料として提供している「外国人面接における効果的な質問リスト」がございます。
無料でダウンロードしていただけるので、こちらの質問リストを活用して外国人求職者に適切な面接が行えます。

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面接時に職場見学も実施し、職場の雰囲気や、仕事内容を実際に目で見て感じてもらうことも定着につなげるための非常に重要なポイントとなります。

②コミュニケーションの工夫

日本人の間で「当然通用するだろう」ということが外国人に通用しないことも多くあります。例えば、コミュニケーションを取るとき、日本人では「当たり前」のことでも、外国人にとっては「初めてのこと」と考えます。

「質より量」のコミュニケーションを意識し、一度伝えたことでも何度も繰り返し伝え、指示は詳細かつ具体的にすることが大切です。

実際に、外国人人材の定着率に影響を与えている要因を分析した調査では、特に外国人人材とのコミュニケーションが容易な企業ほど定着率が高い傾向がみられています。

参考:内閣府|企業の外国人雇用に関する分析 ―取組と課題について―(2019年)

翻訳ツールを活用

採用側が外国語を話せない場合、コミュニケーションを取る事が難しいと感じるかと思います。しかし、翻訳ツールを使うと誰でも簡単に画面を通してコミュニケーションを取る事ができます。

代表的な翻訳ツールとしては、Voice Tra、ポケトークなどのサービスがあります。これらを活用して認識の違いを解消しましょう。

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業務ルールをキャッチーな言葉で明文化
遅刻・欠勤など業務に関するルールについては、採用後すぐに伝えることをおすすめします。始めに伝えておかないと「数分は遅れても遅刻にならない」「無断で欠勤する」など文化の違いによるトラブルを事前に防ぐことができます。

ルールを伝える際は、ルールの内容を分かりやすく伝えることはもちろんのこと、その背景や理由も伝えるとよいでしょう。

また、そのルールにキャッチーなタイトルをつけることで外国人も理解しやすくなります。なお、ルールを守ることができない外国人労働者に対しては、研修期間の延長などのペナルティを設けることが効果的です。

動画マニュアル
業務マニュアルを文章だけで用意している企業も多いですが、日本語に慣れていない外国人労働者には伝わりづらいです。動画マニュアルを導入して、文章のみではなくビジュアルで理解できるようにしてあげましょう。

パートナーの同席
ヨロワークに登録している外国人労働者はパートナーが日本人という人が少なくありません。そのような場合、日本人パートナーにも様々な場面で積極的に同席してもらい協力を依頼すると、候補者本人の安心にもつながります。

③短いキャリアパス

異国の地・文化の中で働く外国人労働者にとって「これ以上スキルアップできない」「自身の潜在能力を活かせない」といった不安は深刻なものになりがちです。
そのことが早期の離職につながってしまいます。

評価はクリアに
「〇〇の資格を取得」「社内テストに合格」「売上〇〇円を超える」「〇〇のポジションを任せる」といった達成可能でかつ、具体的な評価基準を設けると、外国人労働者はスキルアップができているという実感が得られてキャリアパスを描きやすくなります。

同時にマイナス評価も具体的にする必要があります。「3回の遅刻でポジションダウン」といったようにペナルティの基準を明確にしておくとよいでしょう。

褒める文化を仕組みに
週に一度、月に一度といったペースで、かつ複数人を表彰する場を設けることをおすすめします。もちろん、これは前述の具体的な評価基準に基づいたものであるべきです。

日本人は褒めることが苦手だと言われていますが、褒めることは外国人労働者に取ってモチベーションのアップになります。

④定着のための秘伝「外国人労働者に〇〇の術」

秘伝1:外国人労働者に業務割り振りの術

昨今、ITでできる業務と人に任せる業務との細分化が叫ばれていますが、これは外国人と日本人労働者の間でも同じことが言えます。

例えばコンビニエンスストアの業務だと、レジ接客、品出し、発注、清掃などがありますが、日本人従業員にはすべて教えていたからといって外国人も同じようにすべての業務をできるようにしようとすると、うまくいかないということが起きます。

外国人が習得しやすい業務と日本人がすべき業務を細分化することで、外国人労働者本人の「任せてもらっている」というモチベーション維持につながるほか、企業も採用したことの効果を感じやすいという利点があります。

秘伝2: 外国人労働者に丸投げの術

日本語レベルが高い外国人リーダーのもとに、日本語レベルが初級の外国人を複数人配置したグループを作ります。

そのグループに仕事をしっかり任せることで、日本語レベルが初級の外国人労働者のスキルアップにつながるほか、疎外感を感じづらく、さらにリーダーの存在でキャリアパスを見通すことができます。

このことから、外国人労働者にとって成長できる環境を提供することができて定着にもつながります。

外国人労働者の定着に向けた成功へのステップ

2016年から外国人人材の採用を扱う「YOLO JAPAN」だからこそ行きついた、外国人労働者の採用を成功に導くステップを解説します。

①1人目の採用から社内の重要なパートナーになるまで

一人目の採用はとにかく重要です。
一人目にしっかり定着してもらい育てることができると、リーダーを任せられるようになります。その外国人の下に後輩となる他の外国人のメンバーをつけると、企業側のOJT※業務が格段に軽減されます。

このような外国人のグループがいくつもできるように採用を拡大していくと、特に優秀な外国人労働者が生まれるようになるので、その人を社員にするという道筋です。

※OJT=On the Job Training (オンザジョブトレーニング)の略で、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法のこと

▼ヨロワーク採用事例
「国人スタッフが活躍する、老舗茶舗、株式会社宇治園の職場づくり」
https://yolo-work.com/case/12673

②同じ国籍より多国籍 

外国人の採用を始めた直後は、育成が容易になり外国人同士が仲良くしてくれるといった理由から、同じ国籍の人を採用するのが良いと思いがちです。

しかし、彼らはプライベートでも一緒にいることが多いので、日本語がなかなか上達しません。そのうえ、同じ国籍なので派閥として日本人と対立してしまう…ということも起こり得ます。

そのため「同じ国籍は2人まで」というぐらい、思い切った多国籍化をおすすめしています。そうすることで、外国人は日本語で話すようになり、日本人従業員とのコミュニケーションがうまくいくようになります。

実録!外国人の定着に成功した企業の事例

最後に、外国人の定着に成功された企業さまの事例を紹介いたします。

①日本人有資格者を活かすために採用した外国人を育てた介護事業者

<課題>
日本人の介護有資格者が掃除などの雑務に追われるという課題があり、無資格者でできる業務を担ってもらえる外国人の採用を始める。

<定着ポイント>
・日本人の業務と外国人の業務を細分化
※「外国人労働者に業務割り振りの術」をチェック>>
・無資格の外国人を有資格者に
資格取得をサポートして中期的な育成を実施。スキルアップ・キャリアアップができた。

②「日本語を話せない外国人NG」を受けた派遣会社

<課題>
外国人の登録を積極的に受け入れている派遣会社が、派遣先に「日本語を話せない外国人NG」と言われ、派遣先がなかなか広げられないでいた。
その結果、外国人は仕事がない状態に。

<定着ポイント>
・日本語能力の高い外国人をリーダーにして、日本語を話せない外国人とともに派遣する
※「外国人労働者に丸投げの術」をチェック>>
・日本語を話せなくても仕事が増える
・外国人リーダーの下で仕事をするため疎外感を感じづらく、ステップアップも可能に。

③日本人VS外国人でマネジメント不能になった建設会社

<課題>
初めて採用した外国人労働者が真面目で社内でも評判が良かったことから、建設現場作業員として同一国籍を新たに採用。しかし外国人VS日本人という派閥ができて揉め事などが起きるようになり、マネジメントができない事態に。

<定着ポイント>
・派閥解消のため同じ国籍の外国人だけではなく多国籍の外国人を採用
・優秀な外国人に資格取得をサポートしリーダーを育成し、日本人よりも給料が高くなる外国人も誕生
※「外国人労働者の定着に向けた成功へのステップ」をチェック>>

まとめ

外国人労働者を定着させるためのポイントをまとめると、下記の4つとなります。

①面接のクオリティを上げる
②コミュニケーションの工夫
③短いキャリアパス
④定着のための秘伝「外国人労働者に〇〇の術」

外国人労働者の採用には日本人を雇用するときにはない手続きや指導が必要になることが多く、すぐに辞めてしまうとかけたコストは無駄になってしまいます。

そうならないためにも、定着させるポイントを実践し、定着率を高めていきましょう。

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