【2025年最新】外国人雇用で使える助成金一覧|申請方法・注意点も解説

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「ヨロワーク」外国人採用ブログは、外国人実習雇用士の監修の下、外国人材の採用に関する情報を配信しています。最新動向や在留資格情報、文化の特徴、成功事例等の外国人採用の可能性と魅力をお伝えしています。

深刻化する人手不足への対応策として、外国人材の採用を検討する企業が増えています。

しかし、「採用や受け入れにコストがかかるのでは…」と不安を感じる経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

実は、外国人雇用に関して国(厚生労働省)が様々な助成金制度を用意しており、これらを活用することで企業の費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。

本記事では、外国人雇用を検討・実施している方に向けて、厚生労働省が管轄する主要な助成金を「採用」「定着・環境整備」「育成・キャリア」の目的別に整理し、支給額や申請手続き、活用する上での注意点を詳しく解説します。

自社に合った助成金を見つけ、外国人材の活躍推進にお役立てください。

雇用関係助成金とは?(補助金との違い)

まず、基本的な知識として「助成金」と「補助金」の違いを理解しておきましょう。
どちらも国や地方公共団体から支給される返済不要の資金ですが、性質が異なります。

助成金 (主に厚生労働省管轄)

目的
雇用の安定(維持・創出)、労働環境の改善、人材育成など、国の労働政策の目標達成を支援するため。

・特徴
要件を満たせば原則として受給可能。財源は主に企業が支払う雇用保険料。
例: 本記事で紹介するキャリアアップ助成金、人材開発支援助成金など。

補助金 (主に経済産業省や地方自治体管轄)

・目的
新規事業の創出、技術開発、設備投資など、国の産業政策や地域振興策の推進を支援するため。

特徴
公募制で、申請しても審査があり採択されないと受給できない。予算上限がある場合が多い。財源は主に税金。
例: ものづくり補助金、IT導入補助金など。

本記事で詳しく解説するのは、主に厚生労働省が管轄する「助成金」です。要件を満たせば受給できる可能性が高いため、外国人雇用を検討する企業にとって計画的に活用しやすい制度と言えます。

まずはここをチェック!助成金活用の基本条件

厚生労働省の雇用関係助成金には多くの種類がありますが、ほとんどの助成金で共通して求められる基本的な条件があります。

具体的な助成金の内容を見る前に、まずは以下の最低限のポイントをクリアしているか確認してみましょう。

【事業主(企業)側の基本チェック】

✅雇用保険の適用事業所ですか?
原則として、雇用保険に加入している(または加入手続きを行う)必要があります。
(個人事業主でも、従業員を雇用し適用事業所であれば対象になり得ます)

労働関連の法令を遵守していますか?
労働基準法や最低賃金法などを守り、適切な労務管理(残業代の支払い、社会保険の加入等)を行っていることが前提です。

申請前後に会社都合の解雇等をしていませんか?
助成金の申請前後の一定期間内(例:6ヶ月以内)に、会社都合による解雇(退職勧奨含む)等を行っていないことが求められます。

必要な帳簿類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等)はありますか?
これらの書類は申請時に必要となるため、日頃から適切に整備・保管しておく必要があります。

反社会的勢力との関わりはありませんか?
暴力団関係事業主ではないことが要件です。

【雇用する外国人側の基本チェック】

就労可能な在留資格(ビザ)を持っていますか?
日本で働くことが認められている有効な在留資格を持っていることが大前提です。(不法就労は対象外)

雇用保険の加入要件を満たしていますか(または、満たす予定)?
週の所定労働時間などの要件を満たし、雇用保険の被保険者となる(または、なれる)ことが多くの場合必要です。
※これらの基本条件について不明な点があれば、管轄の労働局やハローワーク、社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

【目的別】外国人雇用で活用できる主な助成金

ここからは、外国人雇用に関連して活用しやすい厚生労働省の主要な助成金を、「採用」「定着・環境整備」「育成・キャリア」の3つの目的・段階別に分けて詳しく見ていきます。

「採用段階」で活用できる助成金

新たに外国人を雇い入れる際のコスト負担軽減や、採用ミスマッチ防止に役立つ助成金です。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

【目的】

職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者(外国人を含む)について、ハローワーク、地方運輸局、職業紹介事業者等(以下「ハローワーク等」)の紹介により、一定期間(原則3ヶ月)試行雇用(トライアル雇用)する場合に助成し、その後の常用雇用(期間の定めのない雇用契約)への移行を促進します。

【対象労働者

ハローワーク等の紹介を受けた日において、次のいずれかに該当する者。

  • 紹介日の前日から過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している
  • 紹介日の前日時点で離職期間が1年を超えている
  • 妊娠・出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就いていない期間が1年を超える
  • 就職支援に特別の配慮を要する者(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、ホームレス、住居喪失不安定就労者など)
  • 外国人:上記のいずれかに該当し、ハローワーク等から紹介された者。
    ※就労可能な在留資格が必要です。

【対象事業主】

上記対象者をハローワーク等の紹介により、トライアル雇用(原則3ヶ月間の有期雇用契約)で雇い入れ、常用雇用への移行を目指す事業主。その他、共通要件を満たすこと。

【支給額】

支給対象者1人あたり月額最大4万円。
対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は月額最大5万円。支給期間は最長3ヶ月間。
(※1ヶ月に満たない月は日数に応じて按分計算)

【主な手続きの流れ】

①求人提出
ハローワーク等にトライアル雇用求人を提出。

②紹介・雇入れ
ハローワーク等から対象者の紹介を受け、選考し、トライアル雇用(有期雇用契約)で雇入れ。

③計画書提出
トライアル雇用開始日から2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」をハローワーク等へ提出。

④トライアル雇用実施
原則3ヶ月間、対象者を雇用しOJT等を実施。

(常用雇用移行)
トライアル雇用終了後、常用雇用へ移行する場合は常用雇用契約を締結。

⑤支給申請
トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に、管轄の労働局へ支給申請書と必要書類を提出。

【注意点】

  • ハローワーク等の紹介が必須です。直接応募者を採用した場合は対象外。
  • 常用雇用への移行が前提ですが、必ず移行しなければならないわけではありません。
    ※ただし、移行に努めることが求められます。
  • トライアル雇用期間中の解雇等については、通常の雇用契約と同様に労働法規が適用されます。

【活用イメージ】

①「日本の就労経験が少ないが、意欲のある外国人(例:離職期間が長い定住者など)を、まずは3ヶ月間試してみたい」

②「採用したい職種に未経験の外国人だが、ポテンシャルを感じるので、OJTを行いながら適性を見極めたい」

参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

【目的】

高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母など、就職が特に困難な方をハローワークまたは許可を受けた有料・無料職業紹介事業者等(以下「ハローワーク等」)の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成金を支給することで、これらの求職者の雇用機会の増大と安定を図ることを目的としています。

【対象労働者】

以下の両方を満たす方が対象となります。

  • ハローワーク等の紹介により雇い入れられること。
  • 雇入れ日現在、下記のいずれかの就職困難者の類型に該当すること。

【主な対象者】

対象者の類型によって助成額・期間が異なります。
(中小企業・週30時間以上勤務の場合)

区分①:助成額 60万円 / 助成期間 1年

  • 高年齢者(60歳以上の方)※令和5年4月より、65歳以上の方も本コースの対象となりました。
  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父(児童扶養手当受給者に限る)
  • ウクライナ避難民
  • その他(中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者等、特定の要件を満たす離職者など)

区分②:助成額 120万円 / 助成期間 2年

  • 身体障害者
  • 知的障害者

(ただし、下記の重度障害者等を除く)

区分③:助成額 240万円 / 助成期間 3年

  • 重度障害者等(重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者)

(補足) 週20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は、上記とは異なる助成額・期間が設定されています。

外国人の方の場合
上記のいずれかの類型に該当し、かつ日本での就労活動に制限のない在留資格(例:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)を保有している必要があります。

【対象事業主】

主に以下の要件を満たす事業主が対象です。

  • 雇用保険の適用事業主であること。
  • 対象労働者をハローワーク等の紹介により雇い入れること。
  • 対象労働者を雇用保険一般被保険者(または高年齢被保険者)として雇い入れ、継続して雇用すること(原則として65歳に達するまで、かつ最低でも2年以上)。
  • 労働関係法令(労働基準法、最低賃金法など)を遵守していること。
  • 助成金の申請前および申請後の6か月間において、会社都合による解雇等を行っていないこと。
  • 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの法定帳簿類を整備・保管していること。
  • その他、各助成金共通の要件を満たしていること。

【支給額】

対象労働者の類型、企業規模(中小企業かそれ以外か)、労働時間(週30時間以上か、20時間以上30時間未満か)によって異なります。

また、助成金は、一定期間ごと(通常6ヶ月ごと)に複数回に分けて支給されます。

支給額の例:(中小企業が週30時間以上の労働者を雇い入れた場合)

  • 区分1(高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等):合計 60万円(30万円×2期) / 助成期間1年
  • 区分2(身体・知的障害者):合計 120万円(30万円×4期) / 助成期間2年
  • 区分3(重度障害者等):合計 240万円(40万円×6期) / 助成期間3年

※中小企業以外の企業、短時間労働者の場合は支給額が異なります。

【主な手続きの流れ】

①求人提出
ハローワーク等に対象となる求職者の雇用を希望する求人を提出。

②紹介・選考・雇入れ
ハローワーク等から対象者の紹介を受け、選考を経て雇入れ。
雇用契約を締結し、雇用保険への加入手続きを行う。

③雇用継続・賃金支払
対象労働者を継続して雇用し、賃金を支払う。

④支給申請
支給対象期(通常、雇入れ日や直前の支給対象期の支払日から6ヶ月間)の末日の翌日から2ヶ月以内に、管轄の労働局(またはハロワーク)へ「支給申請書」と必要書類(賃金台帳、出勤簿の写しなど)を提出。

⑤審査・支給決定
労働局で審査が行われ、支給が決定されると助成金が振り込まれる。

⑥以降、助成対象期間終了まで4と5を繰り返す

【注意点】

  • ハローワーク等の紹介が必須です。
  • 継続雇用が前提です(期間は対象者類型による)。
  • 対象労働者の定義(障害の種類、母子家庭の母等の詳細)は厳密なので要確認。
  • 外国人の場合は在留資格要件(永住者、定住者、配偶者等)も満たす必要あり。
  • 他の助成金との併給調整がある場合も。
  • 申請期限は厳守

【活用イメージ】

①「ハローワークを通じて紹介された68歳の意欲あるベテラン人材を、継続雇用前提で採用する際に活用したい」

②「定住者ビザを持つシングルマザーの方をハローワーク紹介で雇い入れ、安定就労を支援する際に活用したい」

③「障害者手帳を持つ方(永住者)をハローワーク紹介で採用し、長期的な活躍を期待して雇い入れ、本助成金を活用する」

参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) |厚生労働省

「定着・環境整備段階」で活用できる助成金

雇用した外国人材が能力を発揮し、長く定着してもらうための職場環境整備や、待遇改善を支援する助成金です。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

【目的】

外国人特有の事情(言語、文化、雇用慣行の違い等)に配慮した就労環境の整備を行い、雇用している外国人労働者の職場への定着促進を図る事業主を支援します。

採用後のフォローアップとして重要な助成金です。

【対象労働者】

事業主が現に雇用している外国人労働者(「特別永住者」及び「外交」「公用」を除いた雇用保険被保険者)。
適法に雇用され、ハローワークへの届出がされていることが前提です。

【対象事業主】

外国人労働者を雇用しており、「就労環境整備計画」を作成し管轄労働局長の認定を受け、計画に基づき新たに以下の就労環境整備措置を実施する事業主

その他、共通要件を満たすこと。

【対象となる整備措置】
以下の①および②の両方に加え、③~⑤のうちいずれか1つ以上を選択し、新たに導入・実施する必要があります。

①雇用労務責任者の選任
外国人労働者の労務管理等を担当する責任者を選任する。

②就業規則等の社内規程の多言語化
就業規則や雇用契約書などを外国人が理解できる言語に翻訳する。

③苦情・相談体制の整備
母国語等で相談できる窓口を設置する等。

一時帰国のための休暇制度の整備
有給での一時帰国休暇制度を就業規則等に新設する。

⑤社内マニュアル・標識類等の多言語化
作業マニュアルや安全標識などを多言語化する。

【支給額】

認定された計画に基づき実施した対象となる就労環境整備措置1つあたり20万円が支給され、1事業主あたりの支給上限額は80万円です。

つまり、最大で4つの措置について助成を受けられる計算になります。
※以前はかかった経費に対する助成率(上限57万/72万)でしたが、現在は措置ごとの定額支給に変更されています。

【対象となる経費】

以下の経費を委託した場合「支給対象経費」となります。

①通訳費
②翻訳機導入費
③翻訳料
④弁護士、社会保険労務士等への委託料
⑤社内標識類の設置・改修費

【主な手続きの流れ】

①計画作成・認定申請
「就労環境整備計画」を作成し、計画開始日の1ヶ月前までに管轄の労働局へ提出し、認定を受ける。
【重要:認定前の実施は対象外】

②措置の導入・実施
認定された計画に基づき、期間内に「就労環境整備措置」を導入・実施する。

③雇用継続・定着確認
就労環境整備措置の実施日の翌日から6ヶ月経過するまでの期間の外国人労働者に離職率が15%以下であること。
※外国人労働者が2人以上で10人以下の場合、6ヶ月経過後の離職者が1人以下。

④支給申請
計画期間終了日の翌日から2ヶ月以内に、管轄の労働局へ支給申請書と必要書類(実施状況報告、経費証明書類、離職状況報告等)を提出。

⑤審査・支給決定
労働局で審査が行われ、支給が決定されると助成金が振り込まれます。

【注意点】

  • 計画の事前認定が必須です。認定前に実施したものは対象となりません。
  • あくまで「新たに」導入する措置が対象です。既存制度の拡充等は対象外となる場合があります。
  • 離職率の目標達成が支給要件に含まれます。日頃からの丁寧なコミュニケーションや労務管理が重要です。
  • 外国人労働者の雇用状況の届出(ハローワーク)を適正に行っていることが必要です。
  • 対象となる経費(委託費など)の詳細も確認が必要です。

【活用イメージ】

「雇用中のベトナム人従業員が安心して働けるよう、雇用労務責任者を選任し、就業規則をベトナム語化、さらに母国語で相談できる外部窓口も契約。合計3つの措置を実施し、60万円(20万円×3)の助成を目指す。」

「複数の国籍の従業員がいるため、雇用労務責任者選任、就業規則の英語化に加え、一時帰国休暇制度の新設、主要な作業マニュアルと安全標識の多言語化も実施。合計4つ以上の措置を行い、上限の80万円(20万円×4)の助成を目指す。」

参考:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

【目的】

有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ(正社員化など)を促進するため、正社員化等の取組を実施した事業主に対して助成します。

外国人材の定着と待遇改善に繋がります。

【対象労働者】

  • 雇い入れ後6ヶ月以上(有期実習型訓練修了者は除く)の期間、非正規雇用(有期雇用、無期雇用パート等)として雇用されている者。
  • 正規雇用として雇用されることを約束して雇い入れられた者ではないこと。
  • 外国人: 長期就労可能な在留資格を持つ者が対象となり得ます。

具体例
〇 対象となり得る
技術・人文知識・国際業務、永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、特定技能2号、EPA(介護福祉士・看護師試験合格後)など

× 対象外
技能実習生、特定技能1号、EPA(試験合格前)、留学(資格外活動)など、在留期間に上限がある、または帰国が前提の資格。

【対象事業主】

対象労働者を正規雇用等に転換する制度を就業規則等に規定し、「キャリアアップ計画」の認定を受け、実際に転換を実施した事業主。共通要件を満たすこと。

【支給額(令和7年度(2025年度)予定、中小企業の場合)】

  • 有期雇用 → 正規雇用:40万円 (ただし、重点対象者(※)は80万円)
  • 無期雇用 → 正規雇用:20万円 (ただし、重点対象者は40万円)

支給は2期(6ヶ月ごと)に分けて行われます。

※重点対象者
勤続3年以上の有期雇用者、過去の雇用が不安定だった者、派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定訓練修了者など。

【主な手続きの流れ】

①計画作成・認定
「キャリアアップ計画」を作成し、転換・直接雇用を実施する日の前日までに管轄の労働局へ提出し認定を受ける。

②制度規定・転換
就業規則等に転換制度を規定し、計画に基づき対象労働者を正規雇用に転換(または直接雇用)する。

③雇用継続・賃金支払(6ヶ月)
転換後6ヶ月間雇用を継続し、転換前より増額した賃金を支払う。

④第1期申請
転換後6ヶ月分の賃金支給日の翌日から2ヶ月以内に、第1期の支給申請書を提出。
雇用継続・賃金支払(さらに6ヶ月): さらに6ヶ月雇用を継続し、賃金を支払う。

第2期申請
転換後12ヶ月分の賃金支給日の翌日から2ヶ月以内に、第2期の支給申請書を提出。

【注意点】

  • キャリアアップ計画の事前認定が必須
  • 対象となる外国人の在留資格を厳密に確認。特に技能実習生・特定技能1号は対象外。
  • 転換後の労働条件(特に基本給)が転換前より向上している必要があります(通常3%以上増など)。

【活用イメージ】

①「アルバイト(有期)で頑張ってくれている外国人留学生が卒業し、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を取得。能力も高いので正社員として登用し、定着してもらいたい」

②「長年パート(無期)で貢献してくれている永住者のスタッフを、本人の希望もあり、待遇を改善して正社員にしたい」

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

「育成・キャリア段階」で活用できる助成金

雇用した外国人材のスキルアップや、キャリア形成を支援するための助成金です。

人材開発支援助成金

【目的】

事業主が雇用する労働者(外国人を含む)に対して、職務に直接関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練(OFF-JTやOJT)などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

従業員のスキルアップを通じて、企業の生産性向上や人材定着を支援することを目的としています。
外国人材の能力開発や、日本でのキャリア形成を後押しするためにも活用できます。

※OFF-JT=職場外研修、OJT=職場内訓練

【対象労働者】

申請事業主に雇用される雇用保険被保険者が主な対象です。  
外国人であっても、雇用保険の加入要件を満たし、適法に就労している場合は対象となります。

ただし、訓練内容が在留資格の活動範囲内である必要があります。

利用するコースや訓練メニューによって、対象となる雇用形態(正規/非正規など)や条件が異なります。

【対象事業主】

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること。  
  • 職業能力開発推進者を選任していること。  
  • 事業内職業能力開発計画を作成し、労働者に周知していること。  
  • 実施する訓練について「訓練実施計画届」等を作成し、訓練開始日の1ヶ月前まで(※提出可能期間は訓練開始日の6ヶ月前から)に管轄労働局に提出すること。  
  • 訓練期間中の賃金を適正に支払うこと(賃金助成対象訓練の場合)。  
  • 訓練経費を負担すること。  
  • その他、共通要件(法令遵守、解雇制限等)を満たすこと。

【主なコース(外国人に活用しやすいもの)

①人材育成支援コース
職務に関連した専門知識・技能習得のための訓練(OFF-JT 10時間以上、またはOFF-JTとOJTの組み合わせ)。

・人材育成訓練
従業員全般(正規・非正規)向けのOFF-JT。

・有期実習型訓練
非正規雇用者を正社員化するためのOFF-JT+OJT訓練。令和7年度より、訓練後の正社員化が原則必須要件に。

②人への投資促進コース
多様な学び方を支援(令和4~8年度の時限措置)。

・高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
高度ITスキル、成長分野、大学院等での訓練に高率助成。

・定額制訓練
サブスクリプション型研修サービスの利用料を助成(上限・回数制限あり)。

・自発的職業能力開発訓練
従業員の自発的な学び(外部講座受講など)の費用を事業主が負担した場合に助成。

・その他
(情報技術分野認定実習併用職業訓練、長期教育訓練休暇等制度)。

③教育訓練休暇等付与コース
従業員が自発的な教育訓練等のために利用できる有給の教育訓練休暇制度(例:3年間で5日以上取得可能など)を新たに就業規則等に設けて適用した場合に助成されるものです。

このコースは、訓練そのものの経費や時間中の賃金を助成するのではなく、従業員が学びやすいように休暇制度を整える取り組み自体を支援する点が特徴です。

【支給額】

助成額は、利用するコースや訓練内容、企業規模(中小企業か大企業か)、対象労働者(正規か非正規か)、賃上げ要件(※)の達成状況などによって大きく異なります。

基本的には「訓練経費の一部(経費助成)」と「訓練時間中の賃金の一部(賃金助成)」、「OJT実施に対する助成(OJT実施助成)」の組み合わせで構成されます。

※賃上げ要件
訓練終了後に賃金を5%以上増加、または資格手当導入等で3%以上増加させた場合に助成率・額が加算される制度。

①人材育成支援コース(人材育成訓練 – 正規雇用労働者向け)

経費助成: OFF-JT訓練経費の45%(賃上げ要件達成時: 60%)
賃金助成: OFF-JT訓練時間1時間あたり800円(賃上げ要件達成時: 1,000円)
(OJT実施助成は対象外)
(注:経費助成・賃金助成には訓練時間数に応じた上限があります)

①人材育成支援コース(人材育成訓練 – 非正規雇用労働者向け)

経費助成: OFF-JT訓練経費の70%(賃上げ要件達成時: 85%)
賃金助成: OFF-JT訓練時間1時間あたり800円(賃上げ要件達成時: 1,000円)
(OJT実施助成は対象外)
(注:経費助成・賃金助成には訓練時間数に応じた上限があります)

人材育成支援コース(有期実習型訓練 – 非正規→正規化)

経費助成: OFF-JT訓練経費の75%(賃上げ要件達成時: 100%)
賃金助成: OFF-JT訓練時間1時間あたり800円(賃上げ要件達成時: 1,000円)
OJT実施助成: 1コースあたり10万円(賃上げ要件達成時: 13万円)
(注:経費助成・賃金助成には訓練時間数に応じた上限があります)

人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練 / 成長分野等人材訓練)

経費助成: OFF-JT訓練経費の75%(中小企業)
賃金助成: OFF-JT訓練時間1時間あたり1,000円(国内大学院の場合)
(OJT実施助成は対象外。賃上げ要件による加算なし。海外大学院は賃金助成対象外。)
(注:経費助成・賃金助成には高額な上限枠あり)

②人への投資促進コース(定額制訓練 – サブスクリプション型)

経費助成: 対象となるサービス利用料の60%(賃上げ要件達成時: 75%)(中小企業)
(賃金助成・OJT実施助成は対象外)
(注:1人1ヶ月あたり2万円、1人1年度あたり利用3回まで等の制限あり)

②人への投資促進コース(自発的職業能力開発訓練)

経費助成: 従業員の自発的訓練費用を事業主が負担した場合、その負担額の45%(賃上げ要件達成時: 60%)(中小企業)
(賃金助成・OJT実施助成は対象外)
(注:訓練時間数に応じた上限額あり)

③教育訓練休暇等付与コース
制度導入助成: 制度導入・適用に対して 30万円(1事業主1回限り)。賃上げ要件等を満たせば+6万円の加算あり。

【主な手続きの流れ】

①計画準備
職業能力開発推進者選任、事業内職業能力開発計画作成・周知。

②訓練計画届提出
実施する訓練内容を定め、「訓練実施計画届」等を訓練開始日の6ヶ月前から1ヶ月前までに管轄労働局へ提出。(事前提出必須

③訓練実施
計画に沿って訓練を実施。

④支給申請
訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に管轄労働局へ支給申請書と必要書類を提出。

⑤審査・支給
労働局で審査後、支給決定・振込。

【注意点】

  • 訓練計画届の事前提出が必須
  • 訓練は職務に直接関連している必要がある。
    ※趣味・教養、マナー研修、法定講習などは原則対象外。  
  • 経費は全額事業主負担が原則。
    ※訓練機関からのキャッシュバック等は不正受給になる可能性。
  • eラーニング等は賃金助成対象外
  • 有期実習型訓練は正規雇用労働者等または無期雇用への転換が原則必須
  • 外国人は雇用保険被保険者であること、在留資格範囲内の活動であることが必要。
  • 複雑なため労働局への事前相談や社労士活用を推奨。

【活用イメージ】

①「外国人従業員(雇用保険加入済)に、業務に必要な専門技術を習得させるため、外部の専門学校の講座(OFF-JT、20時間)を受けさせる(人材育成支援コースの人材育成訓練を活用)。」

②「全従業員(外国人含む)向けに、定額制のオンラインビジネススキル講座(サブスク)を導入する(人への投資促進コース 定額制訓練)。」

③「日本語能力N2の外国人社員が、業務で必要なN1取得を目指すため、本人が希望する外部講座の受講費用を会社が補助する(人への投資促進コース 自発的職業能力開発訓練)。」

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

助成金申請の一般的な流れと注意点

助成金の種類によって手続きの詳細は異なりますが、共通する大まかな流れと、申請・活用する上での重要な注意点をまとめます。

【一般的な申請フロー】

①情報収集・計画
活用できそうな助成金を検討し、労働局等で最新情報を確認。要件に合わせた取り組みを計画。

②計画届等の提出(※必要な助成金のみ)
多くの助成金で取り組み実施前に計画書等を労働局へ提出し、認定を受ける必要あり。

③取り組みの実施
認定計画に基づき、採用、転換、訓練、環境整備などを実施し、証拠書類を正確に記録・保管。

支給申請
各助成金の期限内(例:取り組み終了後2ヶ月以内)に、支給申請書と必要書類を労働局へ提出。

⑤審査・支給
労働局で審査後、支給決定・振込。

申請・活用における注意点

【最新情報の確認】
制度は頻繁に改正されます。
必ず厚生労働省HPや労働局で最新情報を確認してください。

【期限の厳守】
計画届・支給申請の提出期限は厳守。

【事前計画・事前申請】
実施後の申請は原則不可。

【書類の正確性と保管】
不備は不支給に繋がる。支給後も5年間の保管義務あり。

【不正受規は厳禁】
返還・ペナルティ・公表・刑事告発のリスクがあります。

【労働法令の遵守】
日頃からの適切な労務管理が大切です。

【専門家(社労士)の活用】
助成金の内容によっては複雑なため、専門家に相談・依頼することも有効です。

助成金活用とヨロワークの連携

外国人雇用に関する助成金を効果的に活用するためには、まず助成金の対象となり得る、あるいは企業のニーズに合った優秀な外国人材を見つけることが重要です。

そこで、YOLO JAPANが運営する日本最大級の外国人求人掲載サービス「ヨロワーク」をご活用いただけます。

①多様な在留資格を持つ30万人以上の登録者
30万人以上の在留外国人が登録するヨロワークには、特定技能、技術・人文知識・国際業務、永住者・定住者など、様々な在留資格やスキルを持つ求職者が登録しており、助成金の対象となりうる人材を探すことができます。

②ミスマッチの低減
ヨロワークには、詳細な求人情報の発信や、企業側からの外国人に直接アプローチできるスカウト機能があります。

そのため、候補者のスキルや経験、日本語レベル、キャリアプランを理解した上で採用選考を進められ、採用後のミスマッチを防ぐことができ、助成金の定着要件などを満たす上でも重要になります。

③外国人雇用に関するお役立ち情報提供
ヨロワークメディアでは、外国人雇用に関する法改正や、今回のような助成金情報、採用ノウハウなども発信しており、企業の採用活動をサポートします。

助成金という制度的支援と、ヨロワークのような採用プラットフォームを組み合わせることで、外国人採用のハードルを下げ、より戦略的で効果的な人材確保を実現できる可能性があります。

ヨロワークのサービス詳細についてはこちら>>

まとめ

人手不足が深刻化する日本において、外国人材の活躍は企業の持続的成長に不可欠な要素となりつつあります。厚生労働省が提供する各種助成金は、その取り組みを力強く後押ししてくれる制度です。

本記事では、外国人雇用に活用しやすい主要な助成金を目的別に解説しました。

  • 採用段階では、「トライアル雇用助成金」や「特定求職者雇用開発助成金」
  • 定着・環境整備段階では、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」や「キャリアアップ助成金」
  • 育成・キャリア段階では、「人材開発支援助成金」

これらの助成金を活用することで、企業は経済的な負担を軽減しながら、外国人従業員が安心して能力を発揮できる環境を整え、長期的な活躍と定着を促すことができます。

ただし、助成金の活用成功の鍵は、「正確な最新情報の収集」「事前の計画」「適切な手続き」「法令遵守」にあります。

本記事を参考に、自社に合った助成金を見つけ出し、最新の公式情報を必ず確認の上、計画的に申請準備を進めてください。必要に応じて、労働局や社会保険労務士などの専門家の力も借りて助成金を活用しましょう。