人口減少の影響から労働人口が減少の一途をたどっています。人手不足に悩むのは企業だけでなく、自治体も同様です。
特に都市部から離れた地方部になると、その悩みは顕著になります。
今のままでは働き手が減っていき、過疎化してく一方となります。
そのような現状に対して、外国人労働者の存在感が高まっていきます。
例えば、三重県の桑名市や多文化対応を進める埼玉県春日部市、農業分野の雇用モデルを模索する伊賀市など、地方自治体や企業が外国人材と共に地域課題に取り組む姿が注目されています。
そこで本記事では、地方部の企業や自治体に焦点を当て、三重県・埼玉県の先進事例をもとに、外国人との共生に向けた動きを解説します。
桑名市が挑む高度外国人材の受け入れ
三重県桑名市では、生産年齢人口の減少や都市部の初任給が上がった影響により、大卒レベルの人材不足が深刻化しています。
この課題に対応するため、市は2024年に企業や外国人向け不動産サービスを提供する企業と連携し、外国人材の雇用と生活支援に取り組んでいます。
具体的には、理系の高度外国人材1名の採用が実現しており、地方中小企業にとって外国人雇用が有力な選択肢となりつつあります。
参考:三重県桑名市「外国人も働きやすく、住みやすいまちづくり」を本気で進める理由…“大卒”人材不足が進む地方の現実とは(弁護士JPニュース)
外国人住民の増加と地域社会の変化
三重県全体では、令和6年12月末時点で外国人住民が66,836人に達し、前年比6.8%増加しています。人口全体に占める割合も上昇しており、地域社会の多様化が進んでいます。
特にベトナム、ブラジル、フィリピン出身者の比率が高く、外国人住民の割合で見ると伊賀市や木曽岬町は他の市町よりも高くなっています。
この数字からも現れているように、自治体にとって、多文化共生への対応が求められる時代になっています。
そこで、伊賀市では外国人住民向けに、安全で安心してくらせるよう市役所での手続きや生活関連情報を6言語(日本語、ポルトガル語、ベトナム語、中国語、スペイン語、英語)に翻訳したガイドブックを発行しました。
三重県内では初めての取り組みとなり、外国人住民が日本の行政サービスや生活習慣に慣れるためのサポートをする役割があります。
【参考】
三重県|多文化共生:外国人住民国籍・地域別人口調査(令和6年12月31日現在)の結果
伊賀市でくらす外国人のための生活ガイドブックを発行しました【三重県伊賀市】 | 伊賀市のプレスリリース
伊賀市における農業分野のシェア雇用
農業人材の確保が課題となる中、伊賀市では複数の農業法人が連携し、特定技能外国人をシェアして雇用する新たなモデルが注目されています。
この仕組みは、派遣人材のスキル情報を共有し、必要な時期に必要な人材を効率よく配置できる点が特徴です。
農業では農繁期に人手不足が顕著になる傾向があり、その時期以外では常時雇用を行うのが難しいため、特定技能外国人をシェアする仕組みは農業にとって最適な雇用形態になります。
実際に鈴鹿市の洋蘭農家では、インドネシア人スタッフを受け入れて業務の安定化に成功しています。
参考:日本の地域農業を変える起爆剤に!小規模生産者と外国人人材を繋ぐ仕組みづくりへの挑戦|マイナビ農業
春日部市の多言語対応と外国人支援
埼玉県春日部市では、外国人住民が2024年10月時点で6,182人に達し、観光客も約2.4万人(2023年度の3倍)訪れており、多言語対応が課題となっています。
これを受け、市では英語、中国語、ベトナム語など5言語に対応可能な外国人職員を任用。
総合案内窓口で案内・翻訳を行うことで、手続きの円滑化と多文化共生の推進に貢献しています。
参考:春日部市在住や観光客の外国人増加 市職員採用で5カ国語対応可能に – 春日部経済新聞
まとめ
地方における人手不足や社会の多様化に対応するため、外国人材の受け入れと活用は今後ますます重要になると考えられます。
桑名市や伊賀市、春日部市のような取り組みは、地域の持続可能性を高めるうえで重要なモデルケースです。
自治体と民間が連携し、外国人が暮らしやすく働きやすい環境を整えることで、共生社会の実現がより現実的なものとなるでしょう。
