【運送・物流業界】外国人ドライバーが人手不足を解決!雇用メリットと注意点も解説

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加地 志帆 /外国人実習雇用士

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日本の運送業界では、近年人手不足が深刻化しており、さまざまな働き手が求められています。その中で、外国人がドライバーとして活躍できるのか、日本の運送業の現状を踏まえて徹底解説します。また、外国人ドライバーがもたらすメリットについても詳しく見ていきましょう。

この記事では、外国人のドライバーについてまとめました。人材不足が進む日本の運送業、外国人ドライバーを採用するメリットや問題点について詳しくなりましょう。

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外国人ドライバーに注目が集まる理由

国土交通省は、外国人労働者の在留資格である「特定技能」を拡充する方向で、トラック、タクシー、バスなどの自動車運送業に焦点を当てた検討を進めています。この動きには、いくつかの重要な背景が存在します。

国交省は、運送業界における人手不足への対処策として、必要なドライバーの確保を図るために検討を行っています。これには、人員不足の規模調査や技能試験の環境整備が含まれています。

「特定技能」制度は、生産年齢人口の減少により深刻な人手不足が生じる産業分野に外国人労働者を導入するために、2019年にスタートしました。現在の「1号」在留資格では、農業、飲食料品製造業、外食業など12の分野が対象とされています。今回の拡充が実現すれば、初めての分野拡大となります。

運送業界では、2024年から運転手の時間外労働に年間960時間の制限が導入される「2024年問題」が議論されており、物流に対する影響が懸念されています。

また、訪日外国人観光客の増加に伴い、観光地でのタクシー不足が問題視されており、外国人ドライバーの導入が人材確保の一環として考えられています。

政府は、2024年問題への対策として、2023年6月に策定した政策パッケージで、「外国人材の有効活用に向けて調整を進める」と明記しており、この動きが一層強化されています。

(参考)「特定技能」にトラックなどの運転手 国交省が追加検討 – 日本経済新聞

外国人ドライバー雇用のメリット

外国人ドライバーを受け入れることには、いくつかのメリットがあります。

①労働力不足の解消

日本の運送業界は、経済産業省の未来人材ビジョンによれば、輸送・機関運転業の需要率が今後30年で14%増加する見込みであり、人手不足や労働環境の悪化などが課題として挙げられています。外国人ドライバーを受け入れることで、労働力不足を克服し、運送業界や物流業界の成長に寄与できます。

未来人材ビジョン

参照元:未来人材ビジョン

②技術の向上

物流の多様化が進む中、運送業界でも高度なサービスや技術が求められています。例えば、荷物の追跡や温度管理など、物流品質の向上が求められています。また、自動運転技術やドローンの導入など、運送業界も高度化が進んでいます。海外の運送業務では、日本とは異なる技術やノウハウが存在します。外国人ドライバーが日本の運送業界で活動することで、相互に新たな技術やノウハウを習得し、日本の運送業務の向上に寄与することが期待されます。

③インバウンド対策

外国人ドライバーは、日本語以外の言語を話す能力を持っています。そのため、観光地での外国人対応が容易になり、コミュニケーションが円滑に行えます。これにより、観光客のストレスが軽減し、サービス品質が向上します。

外国人ドライバーになれるビザ(在留資格)

①特定技能

特定技能ビザは、外国人労働者の受け入れを促進するために2019年に導入された制度です。特定技能ビザでは、日本語要件として日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2レベル程度の結果、技能要件として各分野・業務区分で設置された技能試験への合格が必要です。

国交省が自動車運送業などの職種で特定技能ビザの適用を検討中であり、その結果、特定技能ビザを持つ外国人ドライバーの数が増加する見込みです。

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②地位または身分にもとづくもの「永定配」

在留資格には、身分や地位に基づくものが4つあり、その特徴は、制約のない活動が可能な点です。このビザを持つ外国人ドライバーの数も比較的多いです。

具体的には、次の4つの在留資格があります。
1. 「永住者」
2. 「日本人の配偶者等」
3. 「永住者の配偶者等」
4. 「定住者」

これらの在留資格に関して、基本的にどの職種でも活動が可能です。そのため、企業にとっては貴重な労働力となります。

また、日系の2世および3世については、「日本人の配偶者等」または「定住者」として在留する場合には、国籍にかかわらず就労活動に制限がないことに留意してください。

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③在留資格「留学」

留学ビザを持つ外国人学生が、アルバイトとしてドライバーを務めることがあります。在留資格の1つである「留学」とは、日本の大学、短期大学、専門学校、日本語教育機関などで学ぶために必要な在留資格です。

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④海外派遣労働者ビザ

外国の企業に所属するドライバーが日本に派遣される場合、海外派遣労働者ビザが必要となります。このビザは、日本に滞在する期間が最大3年間であり、派遣元企業と派遣先企業が異なる場合にも適用されます。ただし、このビザにはいくつかの要件があり、外国人労働者は、派遣先企業からの雇用契約、外国人労働者の技能や専門性についての証明、必要な保険や社会保障の手配などを行う必要があります。

外国人トラックドライバーが抱える問題

外国人が日本で運転免許をとる方法

ここからは、外国人が日本で運転免許をとる方法を紹介します。

国際運転免許を取得(入国後3ヶ月以内)

外国人が日本で運転免許を取得するためには、日本に入国してから3ヶ月以内に国際運転免許を取得する必要があります。国際運転免許は、日本国内外での運転を可能にします。

適性検査を受験

外国人が日本で運転免許を取得するには、適性検査に合格する必要があります。適性検査は、試験場で行われ、筆記試験と実技試験から成り立っています。この試験に合格することが必要です。

必要な書類を提出

適性検査に合格したら、申請用紙に必要事項を記入し、運転免許センターで必要な手続きを行います。必要な書類は、免許の種類によって異なりますが、一般的にはパスポートや在留カード、国際運転免許証や免許の翻訳書、写真などが必要となります。

外国人ドライバー雇用の注意点

最後は、外国人ドライバーの雇用に際して留意すべきポイントを紹介します。

日本の道路事情と運転マナーの違い

外国人ドライバーは、文化や言語の違いから、日本の道路事情や運転マナーに慣れていないことがあります。また、配送先とのコミュニケーションにも障壁が生じることがあります。これらの課題は、労働環境の改善や日本語教育などにより克服できる可能性があります。

労働環境に関する問題

外国人ドライバーは、労働環境に関する問題を抱えていることがあります。過度な労働時間や低賃金などが挙げられます。以下のグラフは、日本のトラック業界における現状を示しています。大型トラック運転者の労働時間が全産業平均より432時間長く、中小型トラック運転者でも384時間長いことが明らかです。これらの問題に対処するために、適切な労働環境の整備や賃金の向上が求められます。

(出典)トラック運送業界の2024年問題について|経済産業省

まとめ

外国人ドライバーを採用することにより、労働力不足の緩和や運送業務の向上が期待されます。しかし、日本の運転技術や安全管理などに関するさまざまな課題が存在します。運送業界は、新技術やサービスの導入などによる多様化と高度化の進展にも対応しつつ、これらの課題に取り組む必要があります。

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