コラム

日本企業がムスリム(イスラム教徒)従業員を受け入れるときのポイントと注意点

外国人の中には、イスラム教を信仰している人、いわゆるムスリムの人々もいます。アラビア語でイスラム教徒を意味するムスリムの人々は、日々厳しい戒律を守って生活をしています。お祈りの時間が決まっていたり、服装に関するルールがあったりします。ムスリムの人を社員として受け入れる際には、宗教の違いから様々な注意が必要です。ここでは、ムスリムの人を雇用する、ムスリムの人と働く際の注意点などについて詳しく解説します。

ムスリム・イスラム教とは

まずは、ムスリム・イスラムの基本情報を紹介します。

ムスリムとは

ムスリムという言葉は、イスラム教の信者を指すアラビア語で、世界中で暮らしています。日本ではアラビア系のムスリムがよく知られていますが、実際には国や民族に関係なく、さまざまなムスリムがいます。

ムスリムの生活は、ルールが細かく決まっています。例えば、豚肉やアルコールを摂ることは避けることが知られていますが、他にもいくつかの決まりがあります。ただし、ムスリム同士でも、年齢、性別、居住地、宗派によって習慣が異なり、個人差があることを覚えておきましょう。ムスリムを訪れる際には、丁寧なコミュニケーションが大切です。

イスラム教とは

イスラム教は、現在のサウジアラビアで生まれた宗教で、唯一の神であるアッラーへの絶対的な信仰を説く宗教です。この宗教は7世紀の初めに、最後の預言者とされるムハンマドによって創始されました。ムハンマドが受けた神からのメッセージは、コーランと呼ばれる聖典にまとめられ、ムハンマドの言動はハディースとして伝えられています。

イスラム教は世界中に広まり、長い歴史の中でさまざまな宗派に分かれています。約20億人もの人々がこの宗教を信仰しており、特に西アジア、北アフリカ、中央アジア、南アジア、東南アジアなどに多くのムスリムが住んでいます。

ムスリムとイスラム教の違い

「ムスリム」は信者自体を指し、「イスラム教」はその信仰体系や宗教そのものを指します。 イスラム教には多くの信者がおり、彼らは「ムスリム」と呼ばれますが、イスラム教そのものは信仰体系と教義を指します。

ムスリムのルール

ムスリムを受け入れる際には、イスラム教のルールを知っておく事が必要です。ここでは、イスラム教のルールを解説します。

ルール①お祈りの時間がある

ムスリムは、1日5回ほどお祈りをする事が決まっています。夜明け、正午過ぎ、午後、日没後そして夜の5回で、この時間帯になると、ムスリムはアッラーの神に祈りを捧げます。この時の注意点としては、3点あります。まず、お祈りができるスペースを事前に用意しておく事です。お祈りはどこでもできるわけではなく、清潔な部屋でなくてはならないのです。次に、お祈りの間は決して話しかけてはいけません。お祈りは、1度中断した場合は、また最初からやり直さなくてはならないため、お祈りをしている姿を見かけた時には、そっとしておくようにしましょう。そして、金曜日はムスリムにとって特別な日です。モスクでは集団礼拝を行います。金曜日が彼らにとって特別な日だと周囲が理解しておく事が必要です。

ルール②ハラーム(ハラム)食材があるる

宗教によっては、戒律で食べてはいけないと決まっている食材もあります。イスラム教では、そのような禁じられた食べ物をハラームと称します。なかでも気をつけなければならないのが、豚肉です。ムスリムの人は、決して豚肉を食べず、豚肉の成分が入ったスープや調味料も禁止されているほど厳格です。なぜ豚肉を食べてはいけないのかは明らかにされていませんが、一説にはその生活習慣から豚が不浄のものとされているからだと言われています。ムスリムの人と食事に行く時には、豚肉を使った料理は勧めないようにしましょう。また、万が一豚肉が入った料理を注文していた場合には、その事をすぐに教えてあげる事も大切です。また、ムスリムではアルコールの摂取も禁止されています。アルコールを口にしたムスリムは、自身を汚れた存在と嫌悪する事もあります。会社の飲み会などに、ムスリムの人を無理に誘わないようにしましょう。

似た言葉に「ハラル(ハラール)」がありますが、ハラル(ハラール)とは、イスラム教の教えに基づいて認められたものを指し、逆に禁止されたものをハラム(ハラーム)と言います。これは、嘘をつく、盗む、豚肉やアルコールを摂るなど、広範な行動や物事に関する考え方です。ハラムからハラルに変わることもあります。

簡単に言えば、ハラルは許可されたもので、ハラムは禁止されたものです。これらの概念は、イスラム教の教えに基づき、ムスリムの日常生活や食事に影響を与えます。

ルール③ラマダン(ラマダーン)がある

イスラム教では、年に1回ラマダンという行事を行います。ラマダンとは、断食月という意味です。イスラム歴の9月に行われ、その1ヶ月間は日が出ている時間には一切の飲食が禁止されています。つまり、ランチやティータイムを一緒に楽しむ事はできません。ラマダンの時期は、お昼の飲食には誘わないようにしましょう。しかし、夕方以降に飲食をする事は禁止されていないため、夕食時に誘うことは何の問題もありません。

ムスリム従業員が日本で働く際に感じる不安

初めて来日するムスリムは、日本で働く際にいくつかの不安を抱えています。ここからは、ムスリム従業員が日本で働く際に感じる代表的な不安を2つ紹介します。

①食事に関する不安

イスラム教徒は、豚肉やアルコールの摂取を避けることが広く知られています。ただし、彼らにとって重要なのは、日常の食事がイスラムの教えに従って合法であること(ハラル)です。学生たちは、日本でハラルの食材が入手可能か、レストランでハラルメニューを選択できるかなどに不安を抱いています。

食事に関して、最終的な判断はイスラム教徒自身が行います。したがって、彼らが日本の食事に慣れるのをサポートすることが重要です。食材や成分について教え、ハラムな成分が含まれていないことを確認することは親切です。

②礼拝に関する不安

イスラム教では、1日に5回の礼拝が行われます。これは日の出と日の入りに基づいており、就業時間中に礼拝の時間が重なることがあります。学生たちは、仕事中に礼拝を行えるかどうか、礼拝の場所があるかどうかなどに関して不安を抱いています。

礼拝については、個々の信者の考え方が異なります。一部の人々は、お昼休みに礼拝をまとめて行うことを選ぶかもしれません。必要に応じて、社内で礼拝時間の調整や適切な場所の提供について話し合うことが重要です。

特に製造ラインなどでの仕事の場合、礼拝の時間を確保するための調整が必要であり、事前に計画しておくことが重要です。

これらの質問や不安に対処するために、イスラム教徒の社員とのコミュニケーションと理解が大切です。

ムスリムの人と働く時の注意点

ムスリムを受け入れたとしても、マナー違反をすれば信頼関係が崩れてしまいます。ここでは、ムスリムの人と働く上で気をつけたい注意点について解説します。

注意点①握手は右手で行う

初めて一緒に仕事をする人に握手を求める事は、決して珍しくはありません。しかし、ムスリムの人と握手をする場合には注意しなければなりません。それは、イスラム教では左手は不浄の手とされているからです。たとえ左利きであったとしても、右手で握手を行うようにしましょう。また、基本的にイスラム教では異性間での握手は行いません。そのため、相手が異性の場合は、基本的に握手を求めないようにしましょう。相手が求めてきた場合のみ例外的に握手ができます。しかし、この時にも軽く触れる程度でガッシリと握らないようにしましょう。

注意点②電話をかける時間に気を付ける

ムスリムの人にとって、お祈りの時間はとても神聖なもので、この時間は、誰であろうと邪魔をしてはいけないのです。ムスリムの人がお祈りをしている時間帯は、電話をかける事は控えましょう。お祈りの時間は、早朝から夜までに5回あり、1回のお祈りにかける時間は、5〜10分以内だと言われています。この時間帯に関しては個人差もあるため、事前に聞いておくと良いでしょう。

注意点③夏場の空調管理

ムスリムの人と仕事をする時の注意点として、空調管理が挙げられます。イスラム教の教えでは、女性は美しい部分を隠さなくてはならないとされており、ムスリムの女性は、室内でも肌を露出する事はほとんどありません。そのため、夏の暑い時期でも常にニカブやビジャブと呼ばれる布で髪を覆い、長袖を着用しています。厳しい日本の夏に、厚着をしていると熱中症の恐れもあるので、涼しい場所に席を設けるなどの対策を行う事が必要です。

ムスリムを受け入れる際の注意点

企業の対応事例

ある米国の企業では、イスラム教徒の社員をサポートするための柔軟な制度を設けたり、同じ職場で働く社員へ配慮を呼びかけたりしています。例えば、オフィス内にプライベートスペースを設けることを認め、1日5回のお祈りに対応できるようにしています。また、ラマダンの期間を考慮し、会議や仕事の締め切りの設定に配慮するよう社員に周知するなど、ムスリムが働きやすい環境整備を進めているようです。さらに、社内でラマダンにチャレンジすることを呼びかけるなど、違う宗教への理解や認識を広める取り組みも行われています。

ムスリムを受け入れる時には、お祈りの時間などイスラム教ならではのルールや注意点を知っておこう

イスラム教という宗教について、詳しく知らないという人は事前に勉強しておく事も大切です。ムスリムは、1日のうちに5回お祈りをします。その時間は邪魔をしないようにしましょう。また、食べてはいけない食材があったりするため、食事に誘う時には気をつけましょう。注意点について事前に知っておく事で、ムスリムの人々を受け入れて、良好な信頼関係が築けるようになります。

加地 志帆 /外国人実習雇用士

この記事を書いた人

加地 志帆 /外国人実習雇用士

2019年にYOLO JAPANに入社し、外国人ユーザーの満足度向上を目指し、特にSNSを通じたプロモーション活動を担当。その経験を通じ現在は、企業が外国人採用をスムーズに進められるようヨロワークのウェブサイトにて情報発信。具体的には、外国人採用プロセスの支援、異文化理解を促進するコンテンツの提供。 2023年11月には外国人実習雇用士の資格を取得。企業と外国人が共存できる社会を目指すため外国人採用の知識を深めている。

外国人採用ならヨロワーク

外国人材の採用は、ビザの制度や手続き、外国人特有の採用方法、職場への受け入れなど、初めての場合はわからないことが多くて不安ではないでしょうか?

ヨロワークは2,400社以上の導入実績があり、専門スタッフが求人掲載から応募、面接までのサポートも行っているため、初めて外国人を採用する方も安心してお任せいただけます。


まずは資料をご覧になりたい方は、下のボタンからご連絡ください。


関連記事

TOP