近年、国際化が進展する日本の労働市場において、外国人労働者の存在はますます重要性を増しています。しかし、外国人労働者が転職する際には、文化的な違いやビザ制度など、多くの課題が含まれています。
この記事では、外国人労働者の転職において必要なビザ変更手続き、書類、そして雇用企業が行うべき手続きについて詳細に解説しています。
転職時には正確な手続きが必要であり、ビザの変更が必要な場合もあるため、外国人労働者と雇用企業は注意が必要です。この手続きを怠ると罰金のリスクがあるため、スピーディーな対応が肝要です。

そもそも外国人労働者は転職できるの?
日本で働く外国人は、主に「就労ビザで働く外国人」と「身分系ビザで働く外国人」の2つに分類されます。
自由な仕事選択が可能なのは「身分系ビザで働く外国人」であり、一方で「就労ビザで働く外国人」は、ビザの制約内でのみ仕事ができます。
身分系のビザとは、主に、「永住者」「定住者」「配偶者」の3つのビザのことを指します。




ここでは主に、「就労ビザで働く外国人」が転職を考える場合について詳しく説明します。
結論から言うと、就労ビザで働いている外国人でも転職は可能です。ただし、転職時にはいくつかの手続きや申請が必要です。これは外国人本人だけでなく、外国人を雇用する会社にも適用されます。
転職パターンに応じた手続き
外国人や雇用する会社が行う手続きは、転職の具体的な状況によって異なります。ここからは、主な3つのパターンごとの手続きを紹介します。
・職務内容が就労ビザの範囲外で変わる場合
・職務内容が就労ビザの範囲内で変わる場合
・職務内容がまったく同じ場合
転職を考える際には、具体的な状況に応じて適切な手続きを行い、法的要件を満たすようにすることが重要です。外国人労働者や雇用企業は、これらの手続きを正確に実施することで、スムーズな転職プロセスを進めることができます。
職務内容が就労ビザの範囲外で変わる場合
例えば、現在の仕事が「技人国」の範囲にあるエンジニアであり、転職後の仕事が「技能」の範囲にある調理人という場合を考えてみましょう。
この場合、以下の3つの手続きが必要です。
(1)所属機関等に関する届出(必須)
勤務先の変更を通知する手続きは、外国人本人が行います。
(2)在留資格変更許可申請(必須)
新しい勤務先と職務内容に合わせて在留資格を変更するための申請です。外国人本人が行います。
(3)外国人雇用状況の届出(必須)
外国人の雇用または離職を通知する手続きで、雇用企業が行います。
職務内容が就労ビザの範囲内で変わる場合
職務内容が「技人国」の範囲内で変わる場合、例えばエンジニアから通訳に転職する場合、以下の手続きが必要です。特定の会社に所属する就労ビザの場合でも同様の手続きが必要です。
(1)所属機関等に関する届出(必須)
勤務先の変更を通知する手続きは、外国人本人が行います。
(2)就労資格証明書の交付申請(任意)または在留期間更新許可申請(在留期間が3か月未満の場合)
新しい会社での仕事が可能であることを証明するための手続きで、外国人本人が行います。
(3)外国人雇用状況の届出(必須)
外国人の雇用または離職を通知する手続きで、雇用企業が行います。
職務内容がまったく同じ場合
職務内容が変わらない場合でも、勤務先が変わる場合には、次回の就労ビザ更新が確約されるわけではありません。特定の会社に所属する就労ビザの場合でも同様の手続きが必要です。
(1)所属機関等に関する届出(必須)
勤務先の変更を通知する手続きは、外国人本人が行います。
(2)就労資格証明書の交付申請(任意)または在留期間更新許可申請(在留期間が3か月未満の場合)
新しい会社での仕事が可能であることを証明するための手続きで、外国人本人が行います。
(3)外国人雇用状況の届出(必須)
外国人の雇用または離職を通知する手続きで、雇用企業が行います。
外国人労働者が転職時に必要な手続き
外国人労働者が日本で転職する場合、在留カードに関する重要なルールがあります。在留カードを持つ外国人は、転職後14日以内に、出入国管理庁に「所属機関の変更の届出」を行う必要があります。

外国人労働者が転職時に必要な手続きをしなかった場合
この手続きを怠ると、20万円以下の罰金が課される可能性があるだけでなく、将来のビザ更新にも影響を及ぼす可能性があることを覚えておいてください。したがって、必ず所属機関の変更を速やかに入国管理局に届け出ることが大切です。
時々、「届出制度を知らずに14日以内に提出しなかった場合、どうすれば良いのでしょうか?」という質問が寄せられますが、遅れて届出を行った場合でも、適切な理由があれば罰金などが課されることは少ないです。
ビザの変更が必要なケース
ビザ(在留資格)は、就労内容や滞在目的に応じて分類されています。従って、転職によって就労内容が大幅に変化する場合(例:技術者から学者、語学教師からエンジニアなど)には、新しいビザの取得が必要な場合があります。ビザの変更が必要な場合、雇用契約書締結後、ビザの変更手続きである「在留資格変更許可申請」を出入国在留管理局で行う必要があります。この手続きに必要な書類は以下の通りです。
・在留資格変更許可申請書
・写真(4cm×3cm)
・パスポートと在留カード
・新しい職業に関する証明書類(例:雇用契約書、会社の商業登記簿謄本など)
これらの書類を提出した後、審査が行われます。審査期間はケースにより異なりますが、一般的には1〜3ヶ月程度かかることがあります。
なお、新しい職業を始める前に、在留資格変更許可が取得されていることを確認することが重要です。在留資格に違反する行為は罰則の対象となる可能性があるため、慎重に手続きを行う必要があります。具体的な手続きや必要な書類は、個々の状況や職種によって異なることがあるため、専門家に相談し、詳細なアドバイスを受けることをお勧めします。
【在留資格別】ビザ変更申請が必要かどうか
以下にいくつかの一般的なビザのカテゴリと、それらが転職時にビザの変更申請を必要とするかどうかについてまとめています。ただし、これらの情報は一般的なものであり、特定の個々の状況には必ずしも当てはまらない場合があります。詳しくは移民局にて最新の在留資格をお確かめください。
在留資格名 | 転職時の変更申請が必要かどうか |
---|---|
技術・人文知識・国際業務 | 在留資格の範囲内の転職ならば不要 |
高度専門職1号 | 必要 |
特定活動(46号・ 本邦大学卒業者) | 必要 |
特定技能 | 必要 |
技能 | 在留資格の範囲内の転職だと不要 |
介護 | 在留資格の範囲内の転職だと不要 |
【参考】身分系(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者) | 不要 |
学生 | 一部例外を除き、就労は許可されていない。(申請すると週28時間以内で勤務可能) |
研修 | 一部例外を除き、就労は許可されていない |
文化活動 宗教活動の範囲内でのみ就労が許可されている 芸術 芸術活動の範囲内でのみ就労が許可されている ビジネスマネージャー 管理職の範囲内でのみ就労が許可されている | 就労は許可されていない |
宗教 | 宗教活動の範囲内でのみ就労が許可されている |
芸術 | 管理職の範囲内でのみ就労が許可されている |
ビジネスマネージャー | 管理職の範囲内でのみ就労が許可されている |

外国人労働者の転職における会社の手続き
外国人労働者が転職する際、雇用企業が行う「外国人に関する特別な手続き」について説明いたします。
就労ビザと在留期間の確認
転職先の企業は、外国人を雇用する前に、就労ビザと在留期間を確認する必要があります。外国人が就労ビザの規定外で働く場合、外国人は「不法就労」の罪に問われ、雇用企業も「不法就労助長罪」で処罰される可能性があります。
雇用契約書の締結
転職先の会社は、外国人労働者に対して、労働条件を明確に説明し、雇用契約書を書面で締結する必要があります。契約書は、外国人が十分理解できる言語で作成されるべきです。
外国人雇用状況の届出
「外国人雇用状況の届出」は、外国人が雇用または離職する際に、雇用主が行う必要がある手続きです。この届出はすべての事業主に義務付けられており、届出を怠ると最高30万円以下の罰金が課されることがあります。届出はハローワーク窓口で行うことができますが、インターネット経由でも申請が可能です。
まとめ
外国人労働者の転職には、ビザの種類や就労内容に応じて異なる手続きが必要です。転職時には、外国人本人と雇用企業の両方が関与し、適切な手続きを行うことが重要です。在留カードを持つ外国人は、転職後14日以内に「所属機関の変更の届出」を出入国在留管理庁に提出しなければなりません。怠ると罰金の可能性があるため、迅速な対応が必要です。
ビザの変更が必要な場合、在留資格変更許可申請が必要で、必要な書類を提出して審査を受ける必要があります。新しい職業を始める前に在留資格変更許可を取得することが大切です。また、外国人雇用状況の届出も必要で、雇用企業が外国人の雇用または離職を通知する手続きです。
ビザの種類によっては、特別な手続きが必要な場合がありますので、詳細な情報やアドバイスを求める際は、移民局や専門家に相談することをおすすめします。外国人労働者と雇用企業が適切な手続きを実施することで、スムーズな転職プロセスを進めることができます。
