技能実習生を受け入れるにあたっては、住居や寮の準備が大変そうだと考えている人もいるかもしれません。定められた住居基準に従って準備を進めれば、技能実習生に快適に過ごしてもらえる住居が用意できることでしょう。ここでは、技能実習生向けの住居基準や家賃の設定をどのようにすればよいかについて、役立つ情報をお届けします。

技能実習制度の見直しで「育成技能」へ
2023年10月現在、新たな「育成技能」制度に向けて、外国人労働者と日本企業にとって待望の変革が動き出します。これまでの「技能実習制度」は「現代の奴隷制度」とまで言われ、批判が絶えませんでしたが、政府の有識者会議が最終報告書案をまとめ、新しい制度への移行を提案しています。

技能実習生の住居基準について
技能実習生が安全かつ健康的な生活を確保できるために、技能実習制度運用要領では住居や家賃の基準と条件が明確に規定されています。
まず初めに、技能実習生の住居基準について詳しく紹介します。
技能実習生の部屋に関する基準
技能実習生の居住環境において、部屋の基準には以下の点が求められます。
・寝室の広さは、1人につき4.5㎡(約3畳)以上確保する必要があります。このスペースは、健康的な居住条件を保つための最低限の要件です。
・各寝室には、1人ずつ収納スペースを提供し、施錠可能で持ち出し不可能なように設計されている必要があります。押し入れを単に仕切るだけでは収納設備とはみなされませんので、注意が必要です。
・寝室には、部屋の面積に対して適切な採光を確保できる窓が必要です。また、暖房設備も提供されるべきです。
・日勤と夜勤の技能実習生が同じ住居を共有する場合、寝室を別に設けることが求められます。これにより、異なる活動時間を持つ実習生が快適に過ごせるようになります。


技能実習生の部屋以外の設備に関する基準
技能実習生の住居には、以下の点に関する基準も適用されます。
・食堂やキッチンが存在する場合、十分な照明と換気設備を設け、食器の清潔な保管スペースを確保し、害虫の侵入を防ぐ環境を整えなければなりません。
・トイレ、洗面所、お風呂場、洗濯設備を提供する必要があります。
・住居が2階以上に寝室を有する場合、安全かつ適切な階段が少なくとも1か所(収容人数が15人以上の場合は2か所以上)に設けられている必要があります。
・共用部分において、感染症の予防を目的とした衛生管理を実施することが求められます。
技能実習生の居住環境に関する基準
技能実習生の宿泊施設においては、環境に関する基準も考慮されます。
・新型コロナウイルス感染拡大の予防策として、換気の不十分な密閉空間、大勢の人々が集まる密集場所、密接な会話が行われる密閉空間の3つの密を回避する対策が求められます。
・宿泊施設は、爆発物の危険性がなく、衛生的に有害でない、騒音や振動が最小限である、自然災害の危険がない安全な場所であることが必要です。
・十分な消火設備が整備されていることが要求されます。
技能実習生の事業の附属寄宿舎に関する基準
労働基準法によれば、以下の条件を満たす宿泊施設は「事業の附属寄宿舎」とされます。
・常態的に相当数の労働者が宿泊し、共同生活が行われていること
・独立または区画された施設であること
・事業経営上の必要性があること
例えば、一軒家を借り上げて技能実習生が共同生活を送る場合、これは寄宿舎とみなされます。この場合、寄宿舎規則を策定し、労働基準監督署に届け出る必要があります。規則には以下の項目について記載する必要があります。
・起床、就寝、外出、外泊に関する事項
・行事に関する事項
・食事に関する事項
・安全および衛生に関する事項
・建築物および設備の管理に関する事項
技能実習生の家賃について

多くの場合、技能実習生は受け入れ企業提供の約6畳の部屋に2人で共同生活を送ります。技能実習生が受け入れ企業に支払う家賃は、おおよそ2万円前後が一般的です。技能実習法には、技能実習生の生活が困難にならないように、家賃を実費を超えて徴収することは禁止されています。
技能実習生の家賃 = 「6畳2名で約2万円」
技能実習生の住居は、受け入れ企業の社員寮や民間のアパートなど、さまざまな形態がありますが、家賃は次のように定められています。
・受け入れ企業所有の社宅や寮などの場合、建物の年数や改修費、居住者の人数などを考慮して算定された金額が家賃として徴収されます。
・アパートや一軒家などの借上げ物件の場合、家賃は技能実習生の人数で均等に分割され、その費用内で徴収されます。なお、借上げ物件の場合、管理費や共益費を技能実習生に負担させることができます。ただし、敷金、礼金、保証金、仲介手数料などの初期費用は、受け入れ企業が負担することとされています。
技能実習生の宿泊施設は、技能実習計画認定申請書に記載される必要があります。技能実習計画は通常、実習開始予定日の4か月前までに提出する必要がありますので、宿泊施設の手配には早めに取りかかることが重要です。
技能実習生の水道光熱費について
水道光熱費は、技能実習生が負担します。徴収される金額は、水道、電気、ガス会社から請求された費用を、居住者の人数で均等に分配した金額以下である必要があります。
例えば、2人で1部屋に住んでおり、水道光熱費が2万円だった場合、技能実習生の負担は1万円以下となります。技能実習生が毎月支払う費用については、詳細な説明が行われ、企業と技能実習生の合意が必要です。
給与から天引きする場合は、賃金控除の協定書が必要であるため、注意が必要です。将来のトラブルを避けるために、協定書の内容は母国語でも提供されると良いでしょう。
技能実習生のそのほかの生活用品について

ここからは、そのほかの生活用品や生活必需品について詳しく紹介します。
Wi-Fi環境の整備
技能実習生の生活にはインターネットが不可欠です。技能実習生の中には、母国の家族と毎日ビデオ通話を行う人もいます。そのため、技能実習生が到着後、すぐにWi-Fiを利用できるように準備しましょう。
技能実習生自身がWi-Fiを契約する方法もありますが、料金未払いや帰国時の違約金のリスクがあるかもしれません。受け入れ企業が法人契約を結び、技能実習生から使用料を徴収する方法がスムーズです。水道光熱費と同様に、給与から差し引く場合は賃金控除の協定書が必要です。
自転車の用意と自転車保険の登録
宿泊場所から勤務地までの距離が遠い場合、自転車を用意することをお勧めします。この際、自転車保険にも加入しましょう。特定の地域では、自転車保険の加入が義務付けられています(例:神奈川県、埼玉県など)。通勤中の事故には労災保険が適用されますが、休日中の事故には自己負担が発生する可能性があるため、どの地域に住んでいても、自転車保険に加入することが賢明です。
生活用品の用意
技能実習生がすぐに生活できる環境を整えましょう。必要なものは、通常の一人暮らしで必要なものと同じです。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、炊飯器などの家電、寝具、キッチン用品などです。これらのアイテムは新品である必要はありません。使わなくなった社員のアイテムを譲り受けるか、リサイクルショップで入手することができます。初めての際には、ティッシュ、トイレットペーパー、ゴミ袋などの消耗品も用意しておくと、技能実習生が日本での生活を円滑に始めるのに役立ちます。
▼寮に用意する家電・生活用品のリスト
技能実習生の快適な生活のサポートにこのリストをご活用ください。
・Wi-Fi
・自転車
・テレビ(日本語学習のため)
・人数分の容量の冷蔵庫
・洗濯機
・人数分の容量の炊飯器
・ガスコンロまたはIH(備え付けがない場合)
・電子レンジ
・寝具(夏と冬のベットまたは布団)
・照明器具
・冷暖房器具(こたつや扇風機など)
・食卓用のテーブルとイス
・カーテン
・炊飯器具(フライパン、大中鍋、ポット、包丁、まな板など)
・食器(皿、コップ、フォーク、ナイフ、スプーンなど)
・掃除用具(掃除機またはほうきと雑巾など)
・救急箱
・日用品(ティッシュ、トイレットペーパー、ゴミ袋、洗剤、シャンプーなど、初回のみ)
技能実習生から特定技能に変更した場合
技能実習2号などから特定技能1号の在留資格に変更する場合、既存の社宅などに住み続けたい場合、居室の広さが7.5㎡未満であっても構いません。ただし、寝室は一人当たり4.5㎡以上の広さが必要です。
この住居規定は、ルームシェアの場合にも適用されます。居室の総面積を住んでいる人数で分割した際、一人当たりの面積が7.5㎡以上である必要があります。
技能実習生と特定技能の住居基準の違いについて
特定技能外国人と技能実習生の間には、異なる住居基準が適用されます。それぞれの基準を詳
しく見てみましょう。
技能実習生の住居基準
技能実習生の住居基準は、まず「適切な宿泊施設」を確保することが求められます。この「適切な宿泊施設」は以下の条件を満たす必要があります。
- 火災の危険が少ない場所であること。
- 有害な作業場から遠ざけられた場所であること。
- 騒音や振動が軽減された場所であること。
- 土砂崩れやその他の災害の危険が少ない場所であること。
- 適度な湿度であり、浸水の危険が少ない場所であること。
- 汚染の危険が少ない場所であること。
特定技能外国人の住居基準
特定技能外国人が住む居室の広さは、一人あたり7.5㎡以上を満たす必要があります。また、ルームシェアで複数人が同じ住居に住む場合は、居室全体の広さを居住人数で割った場合の一人当たりの面積が7.5㎡以上を満たす必要があります。
ここでいう居室とは、「居住、執務、作業、集会、娯楽」などのために利用する部屋を指しており、ロフトは含まれていません。技能実習2号から特定技能1号に在留資格を移行し、引き続き同じ部屋に住む場合は、寝室が一人あたり4.5㎡以上を満たしていれば、問題ありません。
まとめ
初めて技能実習生を受け入れる場合、多くの準備が必要で、企業側には一定の苦労と負担が伴うでしょう。しかし、技能実習生と良好な関係を築き、有用な労働力となるためには、技能実習制度運用要領に明記された住居基準を厳守し、適切な住居や寮を提供することが不可欠です。また、家賃や水道光熱費の徴収に関する説明を丁寧に行い、トラブルを回避する姿勢が求められます。
