コラム

フィリピン人の海外現地採用に必要なMWO(旧POLO)とDMW(旧POEA)についてわかりやすく簡単に解説

フィリピンは、英語の能力と高い教育レベルを持つ人が多い国で、多くの日本の企業が注目しています。しかし、フィリピン現地からフィリピン人の人材を獲得する際には、日本での手続きだけでなく、フィリピンの政府機関であるDMW(旧POEA)(フィリピン海外雇用庁)とMWO(旧POLO)(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)の手続きも必要です。これらの手続きは複雑で、予期せぬ費用が発生する可能性もあります。この記事では、フィリピン人の人材獲得の現状からMWO(旧POLO)とDMW(旧POEA)の役割と重要性について詳しく説明します。

在留フィリピン人の現状

近年、日本でのフィリピン人の雇用は増加しています。その理由として、フィリピン人の優れた英語能力や高い教育レベルが挙げられ、多くの日本の企業がこれらの能力を活用するためにフィリピン人を雇用しています。また、フィリピン人はその勤勉さや協調性も評価され、多様な業界で活躍しています。

以下のグラフからもわかるように、日本における在留フィリピン人の数は282,023人(令和2年6月時点)とベトナムに次いで4番目に多い数字になっています。しかし、フィリピン人を現地から雇用する際には、日本での手続きだけでなく、フィリピンの政府機関であるPOEA(フィリピン海外雇用庁)での手続きが必要となります。このような現状を理解し、適切な手続きを進めることが、フィリピン人の人材獲得の成功に繋がります。

フィリピン人採用の手続きPOLOとPOEAについて詳しく解説します

参照元:出入国在留管理局:令和2年6月末における在留外国人数についてPDF

フィリピン人を海外現地で採用する場合

フィリピン国籍者を海外現地で採用する際には、日本の入管法の規定に加えてフィリピンの国内法に基づく手続きが必要です。これには、フィリピン政府が海外での雇用機会の促進や権利保護を目的として設立した「MWO(旧POLO)/DMW(旧POEA)」と呼ばれる公的機関による手続きが含まれます。一般的には、海外現地の人材を採用する際には、現地のエージェントを介して採用する方法が一般的ですが、フィリピンでは2017年8月から、DMW(旧POEA)認定の現地エージェントを介さない雇用が原則禁止されています。そのため、直接採用を行うことは基本的にできません。

フィリピン国籍者を海外現地で採用する際の流れや手続きについては後述します。

フィリピン人を海外現地で採用する際に関係する重要機関

フィリピン人を海外現地で採用する際に関係する重要機関として、「DOLE(フィリピン労働雇用省)」「DMW(フィリピン海外雇用庁)」「MWO(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)」の3つの機関について詳しく紹介します。

DOLE(フィリピン労働雇用省)とは

DOLE(フィリピン労働雇用省)は、フィリピンの労働に関する政府機関であり、労働者の権利保護や労働市場の調整などを担当しています。DOLEは、フィリピン人労働者が海外で働く際にも関与し、彼らの権利を保護するための規制や手続きを管理しています。

DOLEは、1933年12月8日にフィリピン立法府によって設立された労働省であり、当初は「Act No. 4121」に基づいて設立されました。1978年には労働と雇用の省(Ministry of Labor and Employment)として名称が変更されましたが、1986年のピープル・パワー革命後には、再び「Department of Labor and Employment(DOLE)」として省に戻されました。

DOLEの役割は、労働と雇用の分野における政策の策定、プログラムとサービスの実施、および行政府の政策調整機能を果たすことです。具体的には、労働法の規定の執行、労働市場の監視、職業安全衛生の促進、雇用機会の提供など、多岐にわたる業務を担当しています。

また、DOLEはフィリピン人労働者が海外で働く際にも重要な役割を果たしています。彼らの海外での雇用に関する規制や手続きの管理を通じて、適切な労働条件の確保や権利の保護を目指しています。

DMW(旧POEA)(フィリピン海外雇用庁)とは

DMW(フィリピン海外雇用庁)は、フィリピンの労働省の下部組織であり、海外での雇用に関する規制や手続きを管理しています。具体的には、フィリピン人労働者の海外就労契約の承認や監視、労働者の保護、雇用主との調停などを担当しています。日本でフィリピン人を雇用する際には、DMWの規定に基づく手続きが必要となります。

※フィリピン人労働者が海外での雇用を受ける際に必要な文書であるOECの発行許可を担っていたPOEA(フィリピン海外雇用庁)を含む7つの省庁・組織がDMW(フィリピン移民労働者省)に統合されました。この統合により、名称もDMW(旧POEA)に変更され、新たなスタートを切ることとなりました。

MWO(旧POLO)(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)とは

MWO(旧POLO)(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)は、フィリピンの労働省の海外事務所の一つであり、日本におけるフィリピン人労働者の雇用に関する事務を担当しています。具体的には、日本での就労条件や労働権利の監視、労働者の相談窓口としての役割を果たしています。日本企業がフィリピン人を雇用する際には、MWO(旧POLO)との連絡や相談が必要となる場合があります。

※MWOは以前POLOとして知られていましたが、DMWの新設に伴い名称が変更されました。

「MWO/ DMW」対象外のフィリピン人について

このルールの対象外のフィリピン人には、次のような人々が含まれます。

日本に滞在する主な目的が就労ではない人々

日本人の配偶者や永住者、定住者など日本に滞在する主な目的が就労ではない人々が該当します。彼らは日本に住む権利を持っており、通常は別の在留資格を持っています。例えば、日本人の配偶者や永住者、定住者などが挙げられます。彼らは通常、日本での雇用を目的として日本に滞在しているわけではないため、「MWO/ DMW」の手続きの対象外となります。

留学生

フィリピン人留学生は、主たる目的が学業に従事することであり、就労が許可されている場合でも、学業が優先されます。彼らは通常、留学ビザや学生ビザを持っており、学業に専念するための制限が課されています。

ハイスキルな人材

一部の職種については、特別な手続きにより直接雇用が可能となります。例えば、ITエンジニアや教師などのハイスキルの職種がこれに該当します。ただし、この制度が適用されるかどうかは、事前に確認する必要があります。

MWOと DMWでの具体的な手続き

フィリピン人の人材を雇用するための手続きは、まずDMW認定の現地エージェンシーと契約を結ぶことから始まります。その後、エージェンシーと企業が連携し、MWOとDMWAから雇用の許可を取得し、その後雇用活動を展開します。DMWの認可を受けることで、フィリピン人の人材の雇用がスムーズに進行します。具体的な流れは以下になります。

流れ

  1. まずは、必要な書類を契約を結んだ現地エージェントと準備します。これには、雇用契約書原本、給与詳細、担当業務詳細、業務遂行に必要なスキル詳細、登記簿謄本(日本語原本&翻訳必須)、会社説明資料、会社情報、企業代表者のパスポート写し(カラー)などが含まれます。
  2. 日本のMWOからインタビューの案内が送られ、当日は英語での面接が行われます。フィリピン人の人材を雇用したいと考える企業の代表者、場合によっては副代表者が、雇用の目的や事業内容などについて英語で説明します。この時、通訳を立てることも許されています。
  3. MWOから許可書類を受け取り、それを現地のエージェンシーに送ります。面接が成功すれば、フィリピン政府から許可され、捺印された資料(Original POLO-Verified Document)を受け取り、それを現地のエージェンシーに送ります。
  4. 現地のエージェンシーがDMWに書類を提出し、DMWからの認可を得ます。このDMWへの書類提出は、原則としてフィリピン政府が指定したエージェンシーだけが行うことができます。認可をもらうためには以下の条件を満たし、書類の審査を通る必要があるようですが、すでに200以上ものエージェンシーが存在しています。
  5. DMWからの認可をもらうことで、フィリピン人の人材を雇用できるようになります。人材の募集開始・面接・内定を始めます。
  6. 採用する人材が決まったら、在留資格認定証明書交付申請を行います。
  7. 在留資格認定証明書(COE=Certificate of Eligibility)が取得できたら、捺印資料(Original POLO-Verified Document)と一緒に採用するフィリピンの就労者に郵送します。

DMW認定の条件

  • すでに認可された人材紹介会社またはDMWに認定/登録されていないこと。
  • 少なくとも1年以上存在している
  • FPAの場合:クライアントの雇用主は特定されている必要があり、認定された人材紹介会社またはDMWの認定を受けてはなりません。

フィリピン人雇用コストとその理由

フィリピン人を雇用する際には、フィリピンの認定エージェンシーへの費用が発生します。具体的には、書類作成とDMWへの提出取次のみで、採用するフィリピン人の給料の1ヶ月分の請求となっています。

例えば、採用するフィリピン人の月給が30万円であれば、その30万円をフィリピンの認定エージェンシーへ支払うことになります。

これは一度だけの支払いで、その後の月給はフィリピン人の人材に直接支払う形になります。日本の在留資格申請の取次サービスの相場が15万〜20万円であることを考えると、これは高めの値段設定だと言えます。

さらに、一部の認定エージェンシーでは、人材紹介会社から1ヶ月分、企業から1ヶ月分を請求してくる場合もあります。

フィリピンでは、人材の海外派遣が国内総生産(GNP)の約30%を担っています。人材の送り出し事業は国の根幹を担う事業であるため、企業側の負担がやや高額になります。他の国々では、人材を海外に派遣する際に、その人材からも一部の費用を回収することが許されています。しかし、フィリピンではそのような制度が禁止されているため、企業が全ての費用を負担する必要があり、その結果企業側のコストが増大します。

まとめ

フィリピン人の人材(エンジニアなどの高度人材)を雇用するためのMWO、DMWへの手続きは、思わぬ費用が発生する可能性があります。適切なエージェンシーを探すことが重要であり、そのための情報提供が必要となります。また、例外的にエージェンシーを介さずに雇用できるケースも存在しますが、その条件は厳しいものとなっています。

加地 志帆 /外国人実習雇用士

この記事を書いた人

加地 志帆 /外国人実習雇用士

2019年にYOLO JAPANに入社し、外国人ユーザーの満足度向上を目指し、特にSNSを通じたプロモーション活動を担当。その経験を通じ現在は、企業が外国人採用をスムーズに進められるようヨロワークのウェブサイトにて情報発信。具体的には、外国人採用プロセスの支援、異文化理解を促進するコンテンツの提供。 2023年11月には外国人実習雇用士の資格を取得。企業と外国人が共存できる社会を目指すため外国人採用の知識を深めている。

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