新型コロナウイルスの影響を受けつつも、日本各地で外国人観光客や留学生が増加している中、多くの企業が外国人雇用を再開しています。しかしながら、これまで主要な人材供給国であったアジア各国と地域も高齢化が進行し、人材確保がますます難しくなっています。特に介護やIT分野などでの国際的な人材獲得競争が激化しており、遅れている企業は深刻な危機に直面しています。
外国人雇用にまだ取り組んでいない企業は、採用や人材の定着に必要なノウハウを蓄積できていません。将来的に外国人の人材が必要になった際に、適切なレベルの人材を確保できない可能性が高まります。採用までの直近に至らなくても、遅すぎる前に積極的に行動する必要があります。
この記事では、外国人雇用の現在の状況とメリット、外国人を雇用する際に必要な手続き、外国人採用の成功ポイントに焦点を当てて説明します。


外国人労働者の現状と推移
まずは、外国人労働者の現状についてみていきましょう。
日本では外国人労働者の雇用が年々増加し、その存在が身近に感じられるようになっています。具体的には、厚生労働省によると、2022年10月末時点で外国人労働者の数は、2007年に雇用届け出が義務化されて以来、過去最高となる1,822,725人に達しました。前年比で95,504人増加し、平成19年以降の届け出義務化以来の最高記録を更新しました。
また、直近では、外国人在留者数が過去最高の322万人超えとなり、2023年6月末時点での日本に在留する外国人数は約3,224,000人に達しました。この半年間で約14,9000人の増加があり、特に技能実習生が約358,000人で、前半年比で約33,000人も増加しました。

外国人雇用が増加している理由
続いて、、外国人雇用が増加している理由についてみていきましょう。
外国人雇用が増加している最大の理由は、日本国内での求人に対する応募不足、つまり人手不足です。また、外国人労働者数が増加している要因としては、以下の3つの理由があげられます。
(1)技能実習生の受け入れが増加している。
(2)政府が推進している「高度外国人材」や「留学生」「特定技能」の受け入れが増えている。
(3)雇用情勢の改善に伴い、「永住者」や「日本人の配偶者」といった在留資格を持つ外国人の就労が増加している。
外国人労働者の雇用を進める企業は、労働力不足への対応が主な理由となっており、日本の少子高齢化の影響をもろに受けている状況です。
特に、介護や建設などの分野では、労働力不足が顕著になっています。これらの分野では、外国人労働者の需要が高く、企業は積極的に外国人労働者を採用しています。政府も高齢者や女性の活用を後押ししていますが、それでも労働力不足を解消するために外国人労働者の受け入れを国策として推進しています。
外国人雇用のメリット
外国人雇用の現状を把握したうえで、ここからは、外国人雇用の主なメリットについてみていきましょう。
若くて優秀な人材(労働力)の確保につながる
日本における少子高齢化の進行により、特に特定の産業や地域において労働力の不足が深刻化しています。外国人労働者の雇用は、これらの労働力不足を解消する有効な手段です。外国人の雇用により、企業は生産性を維持し、成長を推進するためのリソースを確保できます。
高度なスキルを持つ人材が集まる
また、外国人労働者は、日本語を学び、異なる文化背景で成長した経験を持つことが多いため、新鮮な視点と高度なスキルをもたらす可能性があります。特に若い外国人労働者は、エネルギッシュで労働意欲が高く、企業全体に活気をもたらすことが期待されます。彼らは企業の競争力向上に貢献できるでしょう。
海外進出の際の即戦力になる
海外進出を計画する企業は、その国の文化や言語に精通した外国人労働者を受け入れることで、現地での事業展開において有利な立場を築くことができます。海外市場への進出を検討する企業にとって、現地の文化や言語を理解している外国人労働者は、市場適応力を高めるのに役立ちます。外国人労働者は、グローバルな顧客に対して円滑なコミュニケーションを取り、海外での事業展開に貢献できるでしょう。
また、海外でのビジネスネットワークの構築やパートナーシップの強化にも寄与します。

外国人ならではの発想による活性化やダイバーシティの推進
外国人労働者は、異なる文化背景や言語を持つため、日本人とは異なるアイデアや視点を提供できます。これにより、企業は新しいアプローチや戦略を探求し、競争力を向上させる機会を得ることができます。多様な文化の多様性は、創造的な問題解決に寄与します。
また、多様性のある労働力を雇用することは、企業にとって社会的責任だけでなく、従業員の幸福感と生産性を高める要因です。異なるバックグラウンドを持つ労働者を採用し、平等な機会を提供することは、企業の信頼性と持続可能性に貢献します。

インバウンドへの対応
外国人労働者の多言語スキルを活用することで、国際的な顧客や訪日外国人へのサービス提供が円滑に行えます。多言語対応は、観光業や国際ビジネスにおいて市場競争力を高めるのに役立ちます。



外国人雇用の課題
続いて、外国人雇用における一般的な課題を紹介していきます。
コミュニケーションの課題
外国人労働者とのコミュニケーションは、言語や文化の違いによって困難な場合があります。言語の障壁や文化の相違により、意思疎通が難しく、誤解やトラブルが生じる可能性があります。外国人労働者の日本語力やコミュニケーションスキルを評価し、適切な対策を検討することが重要です。

文化や習慣の違い
外国人労働者は異なる文化や習慣に基づいて行動することがあり、これらの違いを理解しないと、対人関係や労働環境に影響を及ぼす可能性があります。例えば、叱責の方法や食事習慣、宗教上の信念などに注意が必要です。企業は多様性を受け入れ、異なるバックグラウンドを尊重する文化を築くことが求められます。

雇用手続きの複雑さ
外国人労働者を雇用する際には、在留資格の取得や雇用契約の手続きなど、日本国内での手続きが複雑で時間を要することがあります。これにより、外国人労働者の採用には時間と労力が必要で、入社までの期間が日本国内の労働者よりも長くなることがあります。また、外国人雇用に関する法的規制や手続きについての知識が不可欠です。
外国人雇用に関する知識の必要性
外国人労働者を雇用する場合、日本国内の労働法や外国人に関連する法的規制に詳しい知識が求められます。また、在留資格や雇用契約に関する理解も不可欠です。企業は外国人雇用に関する専門知識を持つスタッフを配置するか、外部の専門家と協力する必要があります。


その他にも、外国人雇用にまつわる様々な問題がありますが、興味のある方は、こちらの記事をご覧ください。

外国人雇用の流れ
外国人雇用には、大きく「日本国内にいる外国人を雇用する方法」と「海外にいる外国人を雇用する方法」の2つに分かれます。
日本国内にいる外国人を雇用する場合は、すでに日本に在留しているため、ビザや在留資格の変更や更新がない場合がありますが、一方、海外にいる外国人を雇用する場合は、ビザと労働許可の手続きや候補者の移動に関する追加のステップが必要になります。
日本国内にいる外国人を雇用する場合
(1)採用の目的を決める
まず、外国人を雇用する目的を明確にしましょう。外国人スタッフがどの部門や職種で活躍するのか、その目的を明確にすることで、適切な候補者を見つける方向性を設定できます。
(2)採用目的に適した人材を募集する
目的が明確になったら、その目的に適した外国人スタッフを募集しましょう。求人広告を作成し、求人情報を適切な媒体で広告することが重要です。国際的な求人サイトやネットワークを活用することもあります。
(3)面談・面接を実施する
応募者との面談や面接を通じて、彼らのスキル、経験、コミュニケーション能力を評価しましょう。外国人スタッフとのコミュニケーションも円滑に行えるかどうかを確認しましょう。また、この際に、就労可能の在留資格なのかをしっかりと確認しましょう。

(4)雇用契約を締結する
選ばれた外国人スタッフとの雇用契約を締結します。雇用契約には、給与、労働条件、契約期間などが明確に記載されるべきです。また、必要な場合、労働許可やビザの手続きを行い、スタッフが合法的に働けるようにしましょう。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


海外にいる外国人を雇用する場合
(1)採用の目的を決める
最初に、雇用の目的を明確に定めることが重要です。企業は、どのようなポジションやプロジェクトに外国人を雇用するのかを確認し、必要なスキルや経験を持つ候補者を特定します。
(2)採用目的に適した人材を募集する
次に、適切な人材を募集します。これには求人広告の掲載やリクルートメント活動が含まれます。求人情報は、採用の目的に合致する要件を明示する必要があります。
(3)面談・面接を実施する
適切な候補者を見つけると、面接や面談を通じてスキルや経験を評価します。採用プロセスは透明かつ公平であるべきで、候補者とのコミュニケーションを重視します。
(4)内定・雇用契約を締結する
選考プロセスを経て、内定を出し、雇用契約を締結します。雇用契約には、雇用条件、給与、勤務地、契約期間などが明示されます。
(5)在留資格認定証明書の交付申請・送付をする
雇用契約締結後、外国人従業員は日本での在留資格を取得する必要があります。雇用主は在留資格認定証明書の申請を行い、必要な書類を出入国在留管理庁(旧:入国管理局)に提出します。

(6)査証(ビザ)発給を申請する
外国人従業員が企業から在留資格認定証明書を受け取った後、日本の外交使節団や領事館で査証(ビザ)の申請手続きを行います。ビザが発給されると、日本への入国が許可されます。
(7)入国する
最後に、査証が発給されたら、外国人従業員は日本に入国し、雇用契約に従事します。入国審査で在留資格認定証明書の提出が求められる場合があります。これらのステップを順守し、法的要件に従って外国人を雇用することで、円滑な採用プロセスと雇用が実現できます。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


外国人労働者の募集方法
ここでは、外国人労働者の主な募集方法を紹介します。
自社サイト・求人サイト・SNSに掲載する方法
最初の方法は、自社のウェブサイト、求人サイト、またはSNSを活用して外国人労働者を募集する方法です。
この方法のメリットは、比較的低いコストで募集できることですが、募集後の手続きやフォローアップ、行政書士の手配などは自社で行う必要があり、初めての雇用の場合は難易度が高いことがあります。また、応募者は直接応募するため、応募者のスクリーニングも自社で行う必要があります。
求人サイトを活用した外国人雇用をご検討の企業様は、ぜひ一度YOLO WORKにご相談ください。
人材紹介会社に依頼する方法
2つ目の方法は、外国人の紹介に特化した人材紹介会社に依頼する方法です。
各会社ごとに紹介可能な在留資格や職種が異なるため、事前に確認が必要です。人材紹介会社は在留資格に関する知識が豊富で、初めて外国人採用を行う企業や複数人採用を希望する場合に役立ちます。
ただし、信頼性のある紹介会社を選ぶために、認可を受けた人材派遣会社や紹介会社を選ぶことが重要です。
外国人社員や外国人の知人から紹介を受ける方法
3つ目の方法は、既存の外国人社員や知人の外国人から友人や知人を紹介してもらう方法です。
外国人同士のコミュニティは活発で、ミスマッチを防ぎやすく、心理的安全性が高まります。
大学や専門学校からの紹介
4つ目の方法は、大学や専門学校、大学院が外国人留学生の就職をサポートしている場合、求人情報を提供し協力を得る方法です。
教育機関の就職課にコンタクトをとり、求人情報を掲載します。地道な方法ですが効果的です。
公的機関(ハローワーク・外国人雇用サービスセンター)の活用
最後の方法は、ハローワークや外国人雇用サービスセンターなどの公的機関を通じて外国人労働者を採用する方法です。
公的機関の支援を受けながら採用活動を進めることができます。
外国人を雇用する際に注意すべき在留資格(ビザ)
日本には在留資格が29種類あり、在留資格によって就労時間や業種など条件が異なります。さまざまな在留資格がありますが、大きく分けると「身分系ビザ(身分系在留資格)」と「就労系ビザ(就労系在留資格)」に分けることができます。
すべての在留資格について確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。

ここでは、それぞれのビザの違いについて簡単に紹介します。
身分系ビザ(身分系在留資格)
身分系ビザ(身分系在留資格)は、外国人の身分に応じて交付される在留資格のことです。これらの在留資格を持つ外国人は、日本国内で自由に働くことが許されており、どのような職種でも働くことができます。
(1)永住者
(2)日本人の配偶者等
(3)永住者の配偶者等
(4)定住者




就労系ビザ(就労系在留資格)
就労系ビザ(就労系在留資格)は、日本国内での就労の可否に基づいて分類される在留資格です。具体的には、「就労が認められる在留資格」「認められない在留資格」「特定活動」の3つに分けられます。
(1)就労が認められる在留資格
就労が認められる在留資格の一部を紹介します。これらの在留資格を持つ外国人は、指定された条件内で業務を行うことができます。
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能
- 技能実習



(2)就労が認められない在留資格
就労が原則認められない在留資格の一部を紹介します。ただし、資格外活動が許可される場合、許可の範囲内での就労が可能です。
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在



(3)特定活動
特定活動は、個別に指定される個人の活動で、法務大臣が特定活動の在留資格を与えます。特定活動の在留資格を持つ外国人の多くは就労が許可されています。
特定活動には、ワーキングホリデーなどが含まれます。

外国人雇用の際に必要な手続き
最後は、「雇用前(採用前)」「雇用時(採用時)」「雇用後(採用後)」の3つのタイミングで必要になる手続きを紹介していきます。
雇用前(採用前)に必要な手続き
雇用前(採用前)に必要な手続きは、「就労が認められた在留資格か確認すること」です。
外国人候補が持つ在留資格で就労が認められているか確認します。在留資格によっては就労が認められていないため、適切な在留資格であるかを確認する必要があります。在留カードを確認する際は、在留カードの偽造に注意しましょう。

雇用時(採用時)に必要な手続
次に、雇用時に関する手続きについて詳しく説明します。外国人を雇用する際に特に注意が必要なのは、雇用契約書です。
労働契約の締結と契約書の作成
外国人を採用する前に、労働契約を締結し、雇用契約書または労働条件通知書を作成する必要があります。これらの書類は、就労ビザ(在留資格)の申請に必要であり、また外国人労働者とのトラブルを未然に防ぐためにも役立ちます。契約書を作成する際には、求職者の母国語や理解しやすい言語で記載し、特に在留資格が交付されなかった場合の取り決めなどを含めることがおすすめです。停止条件を契約書に記載しておくと、在留資格認定証明書が交付された際に雇用契約が有効になることが明確になります。
雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書と労働条件通知書は、給与や職務内容について記載される点では共通していますが、労働条件通知書は労働者への一方的な通知であり、労使間での合意が不要です。一方、雇用契約書は労働者と雇用者が合意したことを証明する書類です。外国人を雇用する場合、トラブルを未然に防ぐためにも雇用契約書の使用が推奨されています。

雇用後(採用後)に必要な手続き
最後は、外国人雇用後に行うべき手続きについて紹介します。
「契約機関届出」と「活動機関届出」
外国人労働者が退職または転職する際、出入国在留管理庁に14日以内に届出を行う必要があります。通常、本人が届け出を行いますが、本人の署名がある場合、会社が代理で提出することも可能です。外国人労働者が届出を忘れる可能性があるため、企業からの案内が役立ちます。届出は在留資格に応じて「契約機関届出」と「活動機関届出」の2つに分かれます。
・契約機関届出:高度専門職、研究、技術・人文知識・国際業務、興行、技能など
・活動機関届出:教授、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修など
中長期在留者の受け入れの届出
外国人労働者を受け入れる場合、出入国在留管理庁への「中長期在留者の受け入れに関する届出」が必要です。ただし、外国人雇用状況の届出が完了している場合は、追加の提出は不要です。
届出期間は中長期在留者の受け入れを開始または終了した日から14日以内です。届出は郵送または電子届出システムを通じて提出できます。電子届出を使用する場合は、事前に地方入国管理署への登録が必要です。届出には外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留カード番号に加えて、活動内容、就労資格、受け入れ日時などの情報が含まれます。届出は雇用者の職員が行います。
また、日本人労働者と同様に、雇用保険加入手続きや健康保険と厚生年金加入手続きも忘れずに行いましょう。

